●CEOと顧客を結びつける
 CMOは、綿密な分析に基づいて顧客を深く詳細に理解し、その情報を全組織に伝えなければならない。企業の成長に欠かせない顧客インサイトを集約した主要業績評価指標(KPI)を、経営幹部のダッシュボードに組み込む必要もある。とりわけカスタマー・ジャーニーに注目することで、CMOは顧客の行動、意思決定に影響が及ぶ瞬間、そして競争環境を明確に把握できる。こうした高いレベルのインサイトは組織に有益だが、特にCEOにとって貴重なものとなる。

 CEOと顧客を結びつけるという考えを、もう一歩先に進めているCMOもいる。小売店を訪れたり、コールセンターでのオペレーションに耳を傾けたりする場にCEOを同伴するなど、月に1度はCEOと顧客の接触機会を設けている例もある。フォードは、ソーシャルメディア部門の責任者とCEOのアラン・ムラーリーが直接やり取りできる体制を整えた(ムラーリーは2014年7月1日付で同職を退任。その後グーグルの取締役に就任)。ある日、1つのツイートがソーシャルメディアチームの目に留まる。「僕はフォルクスワーゲン・アウディ派だけど、いまフォードの新型エッジスポーツを試乗中。これ、なかなかクールだね」。責任者はツイートの投稿者に電話番号を尋ねた。そして試乗を続けていた彼は、CEOムラーリーから直接電話を受け、購入を検討していることに感謝されたという。

●マーケティングの影響を全社に広げる
 CMOが力を発揮できるように部門横断型の体制を構築するのはCEOの役目だが、それを有効活用するのはCMOの仕事だ。しかしCMOは、販売やオペレーション、ITのような、マーケティングと密接に関わる他部門で権限を発揮できないことが多い。その場合、各部門のリーダーと協力して成果を引き出す能力が問われるが、なかなか一筋縄ではいかない。

 なぜかマーケティングは、ちょっとした「贅沢」であり、漠然とした「付加価値」にすぎないと思われがちだ。その主な原因は、企業の成功にマーケティングがどう貢献しているかを十分に理解されていないことだ。エセントのCMOケーネンは次のように語る。「マーケティングはブラックボックス状態であることが多いのです。だからすべてのリーダーを巻き込み、主体的にマーケティング施策に参加してもらう必要があります。当社の場合、組織を立て直す原動力となったのは、CCO(最高顧客責任者)であるパトリック・ラマーズとの協力関係でした。これは、当社の取り組みの中で最も重要なものだったと思います」

 部門横断型の協力体制を実践した別の例として、スターウッドホテル&リゾート・グループのマーケティングチームが挙げられる。同グループは、傘下の全ホテルブランド(セントレジスからフォーポイントバイシェラトンまで)、そして全タッチポイント(ロビーに常駐するコンシェルジュからソーシャルメディアまで)に共通する、理想的な顧客体験の構築に取り組んだ。部門の枠を越えて一貫したブランド体験を提供し、各タッチポイントの担当部門を定め、自社サイトと配信メールのコンテンツをカスタマイズした。そして最も重要な点として、各部門が結果責任を負うようにした。こうした取り組みによって、顧客内シェアを大幅に増やすことに成功したのだ。

 Cスイート(最高○○責任者)とは、不安定な立場であるようにも見える。実際にCEOやCMOの離職率は高く、最近では最高デジタル責任者や最高顧客責任者といった新たな役職が次々と誕生していることも、変化の激しさを物語る。しかし、事業に必要なことは何ら変わっていない。それは、平均以上の力強い成長を遂げることだ。CEOとCMOの役割は事業のニーズに応じて変わるべきだが、両者の協力関係こそ、あらゆる企業において成長戦略を実現させる礎となる。


HBR.ORG原文:CMOs and CEOs Can Work Better Together June 20, 2014

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ジャン-バティスト・コウマウ(Jean-Baptiste Coumau)
マッキンゼー・アンド・カンパニー マーケティング・アンド・セールスグループのパートナー。

 

トム・フレンチ(Tom French)
マッキンゼー・アンド・カンパニー マーケティング・アンド・セールスグループのシニア・パートナー。

 

ローラ・ラバージ(Laura LaBerge)
マッキンゼー・アンド・カンパニー マーケティング・アンド・セールスグループのシニア・エキスパート。専門は組織変革およびマーケティング戦略。