ストーリーの伝達と編集のクオリティに関するこれほどの努力は――もちろん企業のスポンサードによって成り立つものではあるが――いかにコンテンツ・マーケティングがマーケティングの領域に浸食してきたかをよく表している。コンテンツがブランドにより大きな意義を与えているように思えるのだ。

 もはやブランドは単に製品を広めるだけではない。情報を生産し、発掘し、頒布する主体である。企業はその結果、社会にとって経済的に重要なだけではなく、知的な活動においても欠かせない存在へと変貌していくのだ。

 我々の最も革新的な顧客であるゼネラル・エレクトリック(GE)は、コンテンツ・マーケティングの先駆者だ。さまざまな分野における自社の保有知識(航空機の機構から風力タービンに至るまで)を、興味深く読ませるニュース記事、拡散したくなるGIF画像、自社のマイクロサイト、タンブラーなどで公開することに躊躇しなかった(GEが提供する技術関連のオンラインマガジン、Txchnologistもその好例だ)。GEはこれにより、モノをつくる企業からアイデアを生み出す企業へと進化を遂げた。GEはコンテンツを通じて、ニュース価値のある知識を常に保有するブランドとしての地位を確立したのだ。

 レッドブルは、優れたブランド出版がもたらす驚異的な成功を示す好例である。同社の素晴らしいコンテンツが生み出されてきたのは、社内にコンテンツ制作部門であるレッドブル・メディアハウスが設置された賜物だ。レッドブルのコンテンツは魅力的なだけでなく、それ自体が儲けを生む。コンテンツ上のアイデアから生まれた、飲料品メーカーらしからぬ新たな事業の立ち上げに関わっているからだ。

 フィットネスジムを展開するイクイノックス(Equinox)や、写真販売サイトを運営するシャッターストックなども、独自の視点で有益かつ実用的なコンテンツを顧客に提供している。イクイノックスは自社の情報サイトであるQを通じて、高級ジムならではのライフスタイル情報、つまり栄養バランスのよいレシピ、ホテルの部屋でも実践できるエクササイズ、パーソナル・トレーナーによるフィットネスのアドバイスなどを提供している。非会員でもこれらを閲覧可能だ。シャッターストックのブログサイトでは、(商品ではない)アートやグラフィックデザイン、テクノロジーに関する力作の数々を楽しめる。どれも文化的で教育的、かつ有益でエンタテインメント性にあふれている。これが商用サイトの一部であることは、重要だが二次的なことにすぎない。ストックフォトを購入するかどうかはさておき、閲覧者は魅力的な情報を見たくてサイトに戻ってくるだろう。これこそがチャンスである。企業はコンテンツを通じて、自社製品の総体以上の存在へとみずからを進化させることができるのだ。

 現代の優れたブランド出版とコンテンツを兼ね備えた企業は、過去の時代には必ずしも存在しなかったような新たな機会を手にすることになる。従来の常識では、企業が蓄えてきた知識は外部に漏らさず、企業秘密として保管しておくべきものだった。しかしインターネットとソーシャルメディアの出現により、知識は縦横無尽に行き交うようになった。企業はこれにより、自社で培ってきた知識を提供するという新たな立場になった。その見返りに得られるのは支持者や読者、そしてブランド・ロイヤルティだ。

 17世紀の理性の時代は、知識と知性を促進することで確立された。そして、人間の思考の改革を目指した啓蒙主義は、発想や発見、発明という形で世界を変え発展させてきた。当時のサロンに集まった哲学者や科学者のように、今日の企業は革新的なアイデアやユニークな知識、そして専門技術が激しく行き交う場に参加できるはずだし、そうするべきだろう。

 もちろん、あらゆるブランドに科学的なブレークスルーや経済理論の補完を期待できるわけではないし、期待すべきでもない。しかしどのブランドも、不完全なコンテンツ・マーケティング戦略を改善することは可能だ。前述したように、北米のB2C企業の90%はマーケティングにコンテンツを活用しているが、大半がその真のチャンスを認識していない。

 コンテンツとは、ブランドによって事業環境と消費環境を方向づける手段であり、やがて企業の財産となる思慮深い投資ともいえる。良質のコンテンツを武器にすれば、企業は思想的なリーダーにも、変革の旗手にも、業界の専門家にもなれるだろう。それは、みずからを啓蒙することにもなるのだ。


HBR.ORG原文:The Content Marketing Revolution July 1, 2014

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アレクサンダー・ユコウィッツ(Alexander Jutkowitz)
ヒル アンド ノウルトンの副会長兼グローバル戦略責任者。同社傘下のコンテンツ企業、グループSJRのマネージング・パートナーも兼務する。