上司がこの落とし穴に陥ってしまったら、どう対処すればよいのだろうか。第一に、そうした上司は自分自身を傷つけていて、部下をリードする能力も損なっていることを理解しよう。やり慣れた仕事(たいていはルーチンワーク)はこなせるものの、イノベーションには貢献しない。部下のやる気を引き出すこともできず、チームのパフォーマンスも落ち込んでしまうことが多い。

 第二に、そうした上司と話をすることが大切である。率直な会話によって、筆者と同僚が「リニューアル」と呼ぶ自己再生のプロセスに上司が入っていけるかどうか試してみるのだ。コーヒーやランチ、夕食をともにして、望ましい将来を思い描いてもらうためのこんな質問をしてみよう。「もしあらゆることがうまくいったら、10~15年後にこの会社はどうなっているでしょうか?」。会社の中核的な目標や、ビジョンについて尋ねてもよい。「我が社の意義、目的は何でしょうか?」。会社のいまのやり方や状況を尋ねるのではなく、「我が社が存在する理由は何でしょうか。私たちが組織や社会に貢献するにはどうすればいいのでしょう?」と問いかけよう。価値観や理念について尋ねてもよい。「我が社の価値観に従えば、私たちはお互いにどう振る舞えばいいでしょうか。顧客やクライアント、ベンダー、コミュニティに対してはどうでしょうか?」

 神経科学の観点から説明すると、こうした会話によってDMNが活性化し、副交感神経系が刺激され、それによって身体の回復が促される。これはストレスから回復する唯一のメカニズムだ。読者は「上司のセラピストになる義務などない」とお考えかもしれない。たしかにそうだが、価値ある友人や相談相手にはなれるはずだ――たとえ相手が上司でも。

 上司は一夜にしてネガティブになったわけではない。回復にはさらに長い時間を要する。しかし、ポジティブな話題を持ちかけ少し話すだけで、「スターウォーズ」の言葉で言うなら「フォースの光明面へと連れ出す」ことができる可能性があるのだ。私の経験では、この方法は10回のうち2~3回の割合で効果がある。成功すれば、上司とポジティブな関係を取り戻すことができ、上司が再び有能なリーダーへと戻るのを手助けすることになる。

 これがうまくいかなかったら、第三の方法を試してみよう。上司を助けてくれる人を探すのだ。メンターや信頼できる相談相手がいないか調べてみよう。アドバイスや助けがほしい時に上司が頼りにするのは誰だろう。人事部の思慮深い幹部に、上司のコーチングについて話を聞いてみるとよい。

 それでもうまくいかなかったら、第四の選択肢は、自分自身を守り健全さを保つことである。公私ともにリフレッシュの活動を増やし、より積極的に取り組もう。瞑想やヨガ、運動、祈り、人助け、遊び心、明るい展望を思い描く、などの方法がある。

 自分自身を守るだけでなく、部下とチームを守ることもあなたの仕事である。しかし、そのために疲弊し押しつぶされそうになる時もあるだろう。職場でうまくいかなければ、家族もその気配を感じ取るようになる。そして仕事は単なる義務となり、かつてのような楽しく刺激的な挑戦ではなくなってしまうかもしれない。

 そうなってしまえば最後の手段、つまり辞めるしかない。自分の創造性と情熱を保つために、別の場所や仕事を見つける時だ。人生は長くはない。共鳴できない上司と延々とつき合っている時間などないのだから。

 

HBR.ORG原文:Managing a Negative, Out-of-Touch Boss May 28, 2014

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リチャード・E・ボヤツィス(Richard E. Boyatzis)
ケース・ウェスタン・リザーブ大学の特別教授。組織行動学、心理学、認知科学の各分野で教鞭を執る。著書に『EQリーダーシップ』他、多数。