楽天ベンチャーズ

 楽天の子会社である楽天ベンチャーズ(Rakuten Ventures)を例にとろう。2013年に最初のファンドが設立され、更に本年2014年6月には1億ドル(100億円規模)のグローバルファンドが組成された。楽天の発表によれば、「スタートアップ企業のエコシステムを支援することによって、インターネットサービスを世界規模で進化させていく」ことを企図している。

 これはまさに、親会社である楽天がその外部にある潜在性の高いリソースを自ら育て、将来にわたって、楽天の中核事業とのシナジーを求めて行きたい、との宣言だ。楽天といえども、自社の中のリソースだけでは、「ユーザー体験や円滑性を向上させる技術や潜在能力」を必要なスピード感を持って生み出して行くことは難しいと感じていることが背景にある。また、そのような技術や潜在能力は必ずしも日本のスタートアップ企業との付き合いだけでは得られないという認識も持っているはずだ。だから、楽天ベンチャーズの拠点はシンガポールであり、投資対象も、アジア、イスラエル、米国と広範にわたることをこの発表で強調しているのだろう。

インテル キャピタルのCVC投資

 特に米国でオープン・イノベーションを牽引してきたのが、冒頭に述べたコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)である。そのCVCの草分け的存在なのが、インテル社のCVC部門であるインテル キャピタルだ。

 スタンフォード大学によるインテル キャピタルに関するケース・スタディによれば、彼らの投資の対象は、以下の4類型にも及ぶ。

1)エコシステム投資

 スタートアップ企業などが企図する新製品がインテルの技術を必要としている場合。その製品が市場に出せるようになった場合、必然的にインテルの技術が使われるので、インテルとしてもとても戦略的な意義が大きい。

2)市場開拓投資

 すでにインテルが提供している最終製品への需要を喚起するような製品・サービスを提供しようとしている企業への投資。特にアフリカなどの発展途上国への販路開拓などを主な対象とする。先進国ではすでに当たり前の技術・製品でも、発展途上国においてそのような技術・製品の市場を新たに作り出してもらうことはインテルにとって大きな意味を持つ。

3)ギャップ・フィラー(Gap Filler)投資

 インテル自身がこれから開発・販売しようとしている製品に不可欠な技術を提供しようとしているスタートアップ企業などへの投資。

4)アイ&イヤー(Eyes and Ears)投資

 現在のところはインテルの既存事業と関係はないものの、5年先を考えれば何らかのシナジーが生じるのではないかと想像できる、耳目を引くような新技術を開発中の企業。

 これだけの広範囲な投資対象をモニターし、自社にとっての戦略的な価値を踏まえた投資を行う事は一朝一夕でできるものではないが、楽天ベンチャーズなども、理想としてこのような投資を行っていきたいと考えていることは自明である。

 次回以降、この連載では、日本に限らず、また、ITセクターに限らず、このようなCVC活動の現在進行形の状況を考えていきたい。