では、成果の測定問題はいったんおくとして、Strategic Returnを追求するCVC投資の本質はどこにあるのであろうか。それは、事業会社の内部にあるリソースだけではなく、事業会社の外側にあるリソースも、戦略のなかに有機的に組み込んで、活用していこうとする点にあるはずだ。この文脈で、CVC投資とM&Aと相違点を一つ確認するとすれば、CVC投資の場合は、あくまで外側にあるリソースを外側に置いたまま活用するのに対して、M&Aは外側にあるリソースを事業会社の内側に持って来て活用する点だ。この相違点はとても重要である。

 事業会社の外側にあるリソースも事業会社の戦略に組み込んで行くこと、それはまさに、「オープン・イノベーション」そのものであり、CVCはそのプロセスに不可欠な一つの活動と言える。

「オープン・イノベーション」vs.「自前主義の呪縛」

 よく言われているように、アップル社のiPhone、iPadなどはCreative, HandSpringなど他社が生み出した技術の集合体である。他社の技術・リソースを最大限利用して、イノベーティブな製品を生み出す事が「オープン・イノベーション」だ。アップル社が自社で開発した技術だけでは、これらの製品を生み出すことは不可能だったであろう。

 同じようなことが、他のビジネスセクターでも当たり前になりつつある。市場の動き(言い換えれば、ニーズの変化)、技術の進歩の速さが急激なため、たとえ一つの企業がすべての技術を自社内で開発する能力・リソースを持っていた場合でも、自社ですべてをやり切ることは効率的ではない。すべて自前で「できた!」と歓喜しても、その製品あるいはサービスに対する市場の需要はすでになくなっているかもしれない。これが、「自前主義の呪縛」であり、英語では、Not Invented Here (NIH)シンドロームと呼ばれている。これまで、多くの日本企業は過去の成功体験があるため、「自前主義」から「オープン・イノベーション」へ舵を切れないでいる。加えて、「オープン・イノベーション」を遂行する準備がまだ出来ていないのも現実である。