●市場を早期に形成する
 世界を変えるような本当に優れたイノベーションは、市場に受け入れられる前に、まず説明する必要がある。たとえば、私はこのところ次の質問を業界に対して投げかけている――「何十億という機械がオンラインに接続され、通信し始めたらどうなるだろうか」。「インダストリアル・インターネット」(インテリジェント機器をセンサーやソフトウェアでつなぐネットワークを示すGEの用語)の時代を迎えつつあるいま、この新たな現実がどんな違いをもたらすかを一般の人々と法人顧客に向けて明示するのは、マーケティングの役目である。同時に、我々マーケターはその説明能力を通じて、産業技術、アナリティクス、ユーザー体験をつなぐ可能性について自社に全力を尽くして考えるよう促すことができる。

 これはGEが得意とする飛躍的なイノベーションであるため、マーケティングでは「マーケットシェア以前にマインドシェアを」というスローガンを掲げている。我々はこれを「エコマジネーション」、そして最近では「アドバンスト・マニュファクチャリング」の取り組みにおいて実現する必要があった。つまり「コンテンツ工場」となって、データや動画、ソーシャルメディアといった媒体・手法を通じてストーリーを伝えるのである。巧みなストーリーテリングを行い、話題を広めてくれる人々とつながることによって、GEの製品・サービスが価値をもたらせる市場の形成に貢献できる。マーケターは、現在および将来の顧客が必要とするものを予測し、表現する。あるソリューションを顧客が強く求めるようになるはるか以前に、マーケティングはそのお膳立てをしていなければならないのだ。

●新たな事業とイノベーションモデルの創出を助ける
 GEのマーケティングに課せられた使命の1つは、進行中のイノベーションに弾みをつけるために、会社がこれまで考えつかなかった方法を見出すことだ。たとえば、特定のアイデアを既存のオペレーションや予算配分とは別枠で保護し、その価値を証明するために十分な時間を与える、というシンプルなやり方がある。この方法から〈デュラソン〉電池が誕生した。これは、電気の供給が途絶えがちなアフリカの地域で携帯電話の中継塔にバックアップ電源を供給している。この技術はハイブリッド機関車用の電池をつくるプロジェクトとして着手されたが、その後別の目的に転用された。マーケティングを介してイノベーションが促されたもう1つの事例として、「ファストワークス」が挙げられる(英語記事)。これは、リーン・スタートアップの手法をGEのDNAに取り入れるためのプログラムだ。これにより開発が簡素化され、製品の上市が迅速化されている。

●外部の協力者を巻き込む
 GEでは、すべての問題を自分たちだけで解決したいとは考えていない。パートナーシップはスピード向上、規模拡大の早道だ。そのためGEは、データ分析のコンペティションサイトであるカグル(Kaggle)、クラウドベースのエンジニアリング・プラットフォームであるグラブCAD(GrabCAD)、そして商品開発を支援するクワーキー(Quirky)と提携している。クワーキーとの協働を通して、スマートなエアコン〈アロース〉をはじめ、いくつかの製品をすでに市場に出している。これらの協働機会は、マーケターの単純な問いから発展した。「我々は有意義なパートナーシップを新たに構築することに対してオープンだろうか」。「我々は新たな場で、実験を繰り返しているだろうか」。社内の発明家と社外の開発者の間の垣根を壊すことによって、GEのクリエイティブな領域が広がった。これも市場獲得に向けたマーケターの取り組みの1つだ。

 エジソンが存命の時代、永久機関を発明しようと躍起になっているマッド・サイエンティストがまだ数人いた。もちろん、物理学の法則からすればそれは不可能だ。しかしマーケティング部門がイノベーションを後押しすれば、可能であるように感じられる。自社の製品・サービスを市場と結びつけ、その過程で発明の新たなエネルギーを生じさせる――この「永久運動を生むマーケティング」は、私たちが達成できる小さな奇跡である。イノベーションに将来がかかっている会社にとっては、それが唯一の道かもしれない。

 

HBR.ORG原文:Innovation Is Marketing's Job, Too July 3, 2014

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ベス・コムストック(Beth Comstock)
GEのシニア・バイス・プレジデント兼最高マーケティング責任者(CMO)。マーケティング、販売、ライセンス供与、広報を通じてGEの成長の取り組みを主導するとともに、GEの新規事業を監督している。