――世界が日本を注目するようになるのですね。

 日本は、健康的で活力のある、そして経済的に辻褄の合う超高齢化社会のあり方を具体的に実施して見せればいいのです。日本の超高齢化社会システムのデザインとマネジメント手法を学びたいなら、こちらが流暢な英語で説明しなくても、世界の人たちが日本に学ぶ努力をするはずです。そのときこそ、日本は「課題解決先進国」としてのプレゼンスを世界に示すことができる。これが10年前に考え、書いたことです。残念ながらその後の10年間、解を見つけることはそれほど進んではいませんが。

 かつて、建築家の丹下健三氏がハーバード大学で講演をしたとき、会場に詰め掛けた聴衆たちは、天才・丹下健三の言葉を一句たりとも聞き漏らすまいと、流暢とはいえない彼の英語に耳を傾けました。重要なのは、英語力ではありません。自らの思考の基軸をしっかり持っていること、それを堂々と自己表現できることです。こうした状況が、「日本が世界に浸み出していく」グローバリゼーションなのです。

課題設定に必要な「気づく力」

――前回の「グローバリゼーションとは何か」で教えていただいた「日本に世界が浸み込んでくる、日本が世界に浸み出していく」ということの意味が、今回あらためてよく理解できました。そこで知りたいのが、先進課題に取り組むにあたっての方法です。

 ある気になる現象があって、それに対して自分で課題を設定すると想像してください。その前提としてどういうことが必要だと思いますか。

――問題意識を持つことでしょうか。

 問題意識はどこから生まれますか。それは、その現象に対して「これはいけないことだ」「これは良くないことだ」と気づくことからです。

 私は米国留学中のある体験によって、課題設定がいかに重要であるかに気付きました。青天の霹靂というやつです。今も強烈な印象として記憶に残っています。

――多感な青年期の人生を変える体験とは、いったいどんなことですか。

 大学では建築を専攻し、「フォーム フォローズ ファンクション」(形態は機能に従う)という近代建築のテーゼを教わりました。その意味は、銀行がギリシャ神殿のようであるのはおかしいし、学校がゴシック建築である必要はない。形態は素直に機能を表現すべきだという「機能主義」の思想です。

 ところが卒業して設計事務所に入ってすぐ、東京海上火災の本社ビルのプロジェクトに絡んだ「美観論争」という不毛な議論に巻き込まれ、皇居前は100メートルという高さに事実上、制限されました。すなわち、現実は「フォーム フォローズ ポリティクス」、つまり、形態は政治に翻弄されるのです。この経験を通じて、建築家というのは、しがない商売だな、と思ったものです。

 そこでもう少し大きな挑戦がしたくて、都市デザインを学ぶためにハーバード大学のグラデュエート・スクール・オブ・デザイン(GSD)のアーバン・デザイン学科に留学したのです。

 しかし実際に行ってみてわかったことは、「アーバンはデザインできない」、つまり「都市」という複雑な重層構造をデザインする方法論を持っている教授などいないということでした。