今こそ、日本人は“内向き”になるべき

――そうすると、私たちにとって重要なのは、現在の日本の状況に特化して、課題を設定し、解決していくことになりますね。ずいぶん“内向き”な姿勢に見えますが。

 その通りです。10年前に日本人は内向きになっていいのだという趣旨の本(『アメリカと比べない日本』)を書いたのですが、今もその状況は変わってはいません。

――内向きのすすめですか。いったいどういうことでしょう。

 その本で指摘したことは、世界のどこの国もこれまでの歴史で全く経験したことのない「先進課題」が、現在の日本にあるということです。

――日本社会が直面している「少子高齢化」ですね。

「少子高齢化」といわれますが、「少子化」と「高齢化」は全く別の問題です。たまたま日本では、現象としてそれらが同時に起こっているだけです。アメリカでは「高齢化」は起こっていますが、「少子化」は起こっていません。

 また、「少子化」は社会学的現象で、施策によっては逆転できますが、「高齢化」は生物学的現象であり、どんな施策を打っても逆転はできません。

「少子化」に対する施策に関しては、すでにフランスやスウェーデンなどに先例があり、出生率を高める方法についてはある程度答えが出ています。日本は数十年間、無策できただけです。ですから、それらの国で成果の上がった施策を参考にし、文化や風土の違いを考慮しながら、日本も自国に適した工夫を実施していけばいいのです。その意味では「少子化」は「先端課題」ではありません。

 しかし、「高齢化」は違います。世界に先例はありません。人類が史上初めて経験する「超高齢化」という問題が、現在の日本に他国に先駆けて発生しているのです。言い換えれば、日本にもようやくと言っていいのかわかりませんが、他の国より早く「先進課題」が生まれるようになった。他国の先進事例に倣うことはできないので、自分で的確な課題設定をし、解決して見せるという意味で、日本にとって自分の力を試す千載一遇のチャンスというべきでしょう。

 そんな先進課題に直面している今こそ、日本人は“内向き”になって、自分の身近なところにある「超高齢化」に対する解を見つけるため、必死で知恵を振り絞るべきです。そうやって内向きになればなるほど、逆説的に世界最先端に躍り出るという状況が今の日本なのです。

――自分たちで解決策を見つけ出さないと、結局自分たちが困るわけですからね。

 そうです。世界を見渡せば、先進課題として捉えるべき現象は他にもたくさんあります。地球温暖化や資源枯渇、世界の政治的不安定化、中国の台頭と覇権主義もある。しかしそれらの問題や現象に関してはすでにいろいろな国が課題設定をし、解決のための方策を打ち出そうと努力しています。

 一方、「超高齢化」、もっと明確には「超高齢化社会をどう経営するか」という課題の解決は、日本がその先陣を切って新たな社会構想としての解を提示していくことを期待されています。しかもこの問題は人々の生活や人生観まで変えてしまうかもしれない幅広くかつ複雑な課題ですから、取り組むだけの価値があります。

 そこに集中して真剣に考え抜いて、超高齢化社会の経営システムの構想を自力で打ち出し、ほっておけば辻褄が合わない社会を辻褄が合うように実施してみせ、成果を証明していけば、世界各国の政府や研究機関、企業や団体が、「教えてください」と言うでしょう。