「意図的な横ばい」で
トヨタが見据える高み

 LIXILやユニクロのような、日本企業らしからぬスピードとダイナミズムをもって突き進む新人類的な企業と対照的なのが、最近のトヨタの動きです。

 2014年3月期に営業利益で過去最高益を記録し、自動車メーカーとして史上初の年間販売台数1000万台超えを達成したトヨタは、この好調期にあえて横ばいとなる来期の見通しを発表して話題となりました。

 早ければ今年下期にも、販売台数でフォルクスワーゲンに抜かれるといわれていますが、そういう目先のことにはとらわれてはいないようです。業績拡大よりも将来に向けた投資を選んだということです。

 豊田章男社長はそれを「意志を持った踊場」と表現しました。私は、あらためて自分たちの強みであるオペレーションを磨き込み、次の成長のために確実な土台づくりをしているのだと理解しています。

 市場が違うので単純な比較はできませんが、26兆円を売り上げるトヨタは、LIXILやユニクロのように、これからめくるめくような成長をしようという企業ではありません。成長角度、成長速度を設定する際の前提が、そもそも異なるのです。

 しかしそれでも、ライバルの足音がすぐ後ろに聞こえる状況で、もう一度エンジンをつくり替えて良質な成長をめざすという決断は、たいへんな勇気を要するものだったはずです。拡大路線のツケで、2008年から2期連続赤字に追い込まれた苦い教訓も生かされたのでしょう。

 新人類的な企業とは別の、トヨタだからこそできるやり方で、今よりもずっと高い頂を目指すこの挑戦が実を結べば、世界の競合も、過去の自社をも凌駕する強さを手に入れることになるでしょう。