ウーバーは、この条件にもしっかり当てはまる。これほど簡単かつ低コストで、リアルタイムの配車ネットワークを管理できるのは、同社に強力なバックエンド・システムがあるからだ。ウーバーの運行システムは、ネットワーク外部性の効果を享受できる。つまり多くのドライバーが契約すればするほど、同社のサービスは顧客にとって利用しやすくなり(すぐに迎車が来る)、価値が高くなる。その結果、さらに多くのドライバーが(売上げの増加を見込んで)ウーバーとの契約を望むようになる。

 第3の条件は、「動機の非対称性」に乗じたビジネスモデルを持つことだ。これは、ウーバーが直面している課題である。動機の非対称性とは簡単にいえば、既存のプレーヤーから見て儲からないか売上規模が小さすぎるために撤退または無視されている市場を狙うということだ(詳細はクリステンセンらと私の共著『イノベーションの最終解』で論じている)。

 草創期のセールスフォース・ドットコムを考えてみよう。同社がクラウドベースのCRMソフトを販売した相手は、シーベルのような業界リーダーたちの高級な製品にはとても手を出せない中小企業であった。同社の競合は既存プレーヤーの製品ではなく、中小企業におけるペンと紙であり、手動で作成した集計表だったのだ。当時のセールスフォース・ドットコムは市場リーダーの顧客を奪ったわけではないため(むしろ市場を拡大した)、リーダー企業は何の痛みも感じなかった。

 動機の非対称性を活用するもう1つの方法は、既存企業が対抗したくても採算に合わず断念するようなビジネスモデルを構築することだ。ネットフリックスがブロックバスターを打ち負かした理由の1つはこれである。ブロックバスターの利益の大半は、実はレンタルDVDの延滞料金であったが、ネットフリックスのビジネスモデルはそれがない。自社の収益源を台無しにする、あるいは確実に損失が生じるような戦略を模倣する企業は少ないだろう。

 ウーバーは、動機の非対称性を活用するどちらの方法も採用していない。既存のタクシー会社と対象顧客が同じであり、料金も変わらない(高い時もあるが)。したがってタクシー会社は、ウーバーを無視、黙認するどころか、あらゆる手段を使って――タクシー運転手たちによるデモや、法による規制の要望も含め――激しくウーバーに対抗している。

 ウーバーにとってさらに不利な情勢が続く。タクシー会社とウーバーとの争いが耳目を集め、タクシー会社の反撃に加勢しようという目ざとい企業が現れているのだ。たとえば、シンガポールでいま人気のアプリに「グラブタクシー」というのがある(英語記事)。これはウーバーと似たようなインターフェースで、従来のタクシーを簡単に呼ぶことができる。このアプリを通じてタクシー運転手は、中抜きされることなしに、ウーバーとほぼ同じような利便性を顧客に提供できる。グラブタクシーは市場を破壊しているのではなく、新規参入者に対する既存のタクシー会社の反撃を支援しているのだ。

 こうした競争は顧客にとっては、より簡単で便利なサービスを享受できるのでありがたい。ベンチャーキャピタルからの潤沢な資金を考えると、ウーバーが今後もターゲットとする市場で拡大し続けていくことは疑いの余地がない。だがそこに破壊の第3の条件が欠けているとすれば、競争は困難で高くつくものになるだろう。


HBR.ORG原文:What's Holding Uber Back June 2, 2014

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スコット・アンソニー(Scott Anthony)
イノサイトのマネージング・パートナー。同社はクレイトン・クリステンセンとマーク・ジョンソンの共同創設によるコンサルティング会社。企業のイノベーションと成長事業を支援している。主な著書に『イノベーションの最終解』(クリステンセンらとの共著)、『イノベーションの解 実践編』(ジョンソンらとの共著)などがある。