「サービスの工業化」で
トップ営業のノウハウを標準化

名和高司
一橋大学大学院
国際企業戦略研究科 教授

東京大学法学部卒業後、ハーバード・ビジネス・スクール修士(ベーカースカラー授与)。三菱商事を経て、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社、自動車・製造業分野におけるアジア地域ヘッド、ハイテク・通信分野における日本支社ヘッドを歴任。2011年より現職。

名和 つまり、放置されている顧客が八割もいるということ。そのうち一割くらいは左下の象限に入ると思いますが、七割の顧客は収益改善の余地が大きい。狙うべきはここ。BtoB企業には、リセグメンテーションが求められています。

武藤 七割の顧客は、ロングテールと言い換えることもできるでしょう。私たちサービスソースは、このエリアにフォーカスしています。当社のお客様は、サービス更新率を高めたいと考えているBtoB企業です。大きな取引先に対しては営業担当者が頻繁に訪問していますが、中小規模の顧客へのサポートは不十分なケースが多い。つまり、これまで顧客対応に課題のあった右下のエリアを当社が代行し、サービス更新率向上という価値を提供する。それが当社の役割です。

 たとえば当社のクライアントの一つである富士通グループのジー・サーチ様(東京都港区、渡瀬博文・代表取締役社長)とは、お客様へのサポートレベルをさらに向上させるなど、お客様に価値創出いただくために必要なアプローチを協議しています。

名和 クライアントには、どのような業種の企業が多いのですか。

武藤 もともと、当社のサービスはIT分野から始まりました。クラウドが普及したいま、ユーザー企業は便利なサービスをすぐに利用することができます。同時に、すぐに退出することもできる。クラウド事業者にとって、更新率の維持・向上は生命線です。営業担当者は大口顧客を必死に守っていますが、ロングテールにまでは手が回りません。そこで、私たちの出番です。最近はITだけでなく、ヘルスケア機器などの分野にも当社のビジネスは広がっています。

名和 ユニークなビジネスモデルですね。クライアントに対する提案活動は、どのように行っているのですか。

武藤健一郎
サービスソース・インターナショナル・ジャパン 社長

ブラジル空軍工科大学電子工学部卒業。イェール大学経営大学院修了(MBA)。マッキンゼー・アンド・カンパニーでコンサルティング業務に従事後、保守サービスや定期課金型のサービスの更新率向上をサポートするサービスソースに入社、2013年8月より現職。

武藤 最初に、コンサルティングを実施します。お客様の手元にあるデータを分析させてもらい、当社が価値を提供できるかどうかを判断します。その企業が更新率向上の施策をやり尽くしていて、改善の余地がほとんどない場合などには、残念ながらお断りすることもあります。

名和 サービスソースが業務を受託した場合、どのようにして更新率を高めているのですか。

武藤 いくつかのアプローチがありますが、最も効果的なのはトップ営業マンのノウハウの標準化です。お客様企業のトップ営業の方に協力してもらい、「こんな場合には、こうする」「こう聞かれたら、こう答える」といったノウハウを文書化。当社のコールセンターでは、その文書を見ながらユーザーと会話しています。いわば、「サービスの工業化」です。

名和 クルマの営業でも、同じようなことがありますね。平均的な営業担当者が、さまざまな独自ノウハウを持つトップ営業に追い付くのは難しい。しかし、見よう見まねでやっているうちに、ある程度のレベルには到達する。全体的な営業能力を底上げすることができます。