●新奇性を示す

 誰もが新しいものを見たがり、聞きたがっている。TEDがスピーカーに提示するガイドラインの1つに、「お決まりのジョークを避ける」というのがある。つまり聞き手を驚かせるような、特別で、意外性に富む情報を提供し斬新さを示せということだ。

 マイクロソフトの共同創業者で慈善活動家のビル・ゲイツは、2009年に「蚊、マラリア、そして教育」と題したプレゼンを行った。

 話の途中で蚊の入ったガラス瓶のフタを開け、聴衆の度肝を抜く。「ご存知の通り、マラリアは蚊が媒介します。皆さんにも体験していただこうと思って、今日は何匹か連れてきました。ちょっとばかり自由にしてやりましょう。貧しい人しかこの体験ができないというのも、おかしな話ですから」。持ってきた蚊にはマラリアの病原体はないと言って聴衆を安心させたが、それはこの小道具に聴衆が息を飲み、ゲイツの言葉に引き込まれたあとだった。

 神経科学者のA. K. プラディープ博士によれば、私たちの脳は新奇なものを無視できないという。「脳はキラキラした新しいもの、目立つものに目を向けるよう習慣づけられている」。彼自身、そのことをよくわかっているに違いない。ニューロマーケティングのパイオニアで、有名ブランドの新製品の広告やパッケージング、デザインなどを研究しているのだから。

 職場では、あなたの聞き手(上司、同僚、見込み客)はこう考えている。「この人は、私が知らないことを教えてくれているだろうか?」だから、意外で驚くような何かを示すか、昔からある問題への斬新な解決策を提案しよう。

 ●ビジュアルを強調する

 ロバート・バラードは、2008年のTEDのプレゼン「海洋探査」で、57枚の文字のないスライドを用いて、聴衆を大西洋の海面から4000メートルの深海へといざなった。海底の様子を写真やイラスト、アニメーションで示し、文字はまったく使っていない。聴衆は夢中になった。

 なぜ、プレゼンで画像だけのスライドを使ったのかと尋ねてみると、「だって、僕はストーリーを語っているのであって、講義をしているわけじゃないからね」と返事が返ってきた。

 研究によれば、私たちは文字だけの情報よりも、文字と画像の両方で示された情報をより深く理解する。アイデアが言葉だけで伝えられる時に聞き手の記憶に留まるのは、コンテンツの約10%である。そこに画像を加えれば、65%にまで高まるという。

 次にあなたがパワーポイントでプレゼンを行う時には、文字で埋めることや箇条書きをやめて、ビジュアル的に目を引くデザイン要素を増やそう。テーマを強調するために、写真やアニメーション、イラストを提示するといい。そうすれば、あなたのメッセージは聞き手の記憶に残るだろう。


HBR.ORG原文:What I Learned Watching 150 Hours of TED Talks April 11, 2014

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カーマイン・ガロ(Carmine Gallo)
コミュニケーション・コーチ。CNNとCBSの元レポーター。インテル、シスコ、ディズニーなど多くの著名企業のビジネスリーダーに、メディア対応から投資家へのプレゼンまでさまざまなコミュニケーション術を指南する。近著に『TED 脅威のプレゼン』(日経BP社)がある。