――多くの苦難にも遭われ、克服してこられましたね。

松久 はい。南アメリカでは、共同経営者とうまくいかず失敗しました。アラスカで再挑戦しましたが、オープンして50日後に店が全焼して、本当に自殺まで考えました。その後ロサンゼルスに渡って店を開きましたが、2年間儲けが出ませんでした。でもこうした経験が、私の価値観、家族との絆、そして忍耐力を強くしてくれたんです。これらの困難に遭わなければ、いまの自分はなかったでしょう。

――ノブの共同経営者たちとあなたは、もう20年以上も続いていますね。パートナーシップが成功している理由は何でしょうか。

松久 一緒に店を開こうとデ・ニーロから最初に誘われた時、私は拡張を考えていませんでした。ロサンゼルスの店で忙しく、お客さんも入っていて、私はそれで満足でした。

 それでも彼と話をするためにニューヨークに行って、4日ほど一緒に過ごしました。そしてお断りしたんです。ペルーとアラスカでの経験から、共同経営はうまくいかないという思いがあったからです。4年後、デ・ニーロはまた私を誘いました。私はすっかり忘れていたのに、彼はずっと私のことを考えていてくれたんです。その根気を見て、彼は信頼できると確信しました。

 パートナーシップはお金だけではなく、協力し合い、理解し合うことが必要です。毎月、あるいは2カ月おきに私たちはニューヨークで会い、どんな問題でも取り上げて話し合います。それが私のやり方です。

――あなたは頻繁に出張していますが、常に心身をフレッシュに保ち、すぐに新たな環境に順応するために、何をしているのですか。

松久 エクササイズに励んでいます。何年か前に腰を痛めた時、医者から2つにひとつだと言われました――手術か、体重を減らすか。それ以来、ランニングマシーンや自転車、水泳、ストレッチなどの運動を毎日やっています。運動の時間がないと言う人は多くいますが、それは言い訳です。誰でも朝の30分か45分ぐらいはあるでしょう。汗をかくのは本当に気持ちがいいですし、時差ぼけにも効くんです。

――あなたは建築関連業(材木商) を営む家のお生まれですが、建築と料理に共通点はありますか。

松久 私は高校で建築の勉強をしましたが、夢は寿司職人でした。食べ物と料理が好きだったからです。

 ミュージシャンのケニー・Gをご存じでしょうか。彼は私のよき友人で、料理と音楽がいかに似ているかについて語り合ったものです。彼は音楽を愛し、私は同じように料理を愛している。そして個々のパフォーマンスは毎回違ったものになるといいます。なぜならパフォーマンスには観客によって成り立つ部分があるからです。観客は舞台で演奏するケニーを見て、反応を示します。

 料理とお客さんの関係も、それと同じだと思うんです。お客さんが食べながら、笑顔になり、笑い声を上げる――私にとってそれがいちばん嬉しい瞬間です。料理と音楽、そして建築や演技、さらには政治でも、情熱なくして成功はありえません。


HBR.org原文:Life’s Work: Nobu Matsuhisa, October 2013.

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アリソン・ビアード(Alison Beard)
『ハーバード・ビジネス・レビュー』のシニア・エディター。