優れた課長が、優れた部長になれるか

 いまさらですが今の日本企業に求められているのは、過去の経験から培った強みを発揮することではなく、過去に経験したことのない領域への挑戦です。かつての手本としたアメリカのようなモデルがなくなり、デジタル化の波は従来の事業環境を一変させました。日本の国内市場も縮小しています。

 先行するモデルもなければ過去の蓄積も通用しない。このような環境では、未知なる世界を切り開くリーダーシップが必要となりますが、経営者に求められる本質的なことでありながら、戦後の日本企業の経営者には最優先課題でなかったのです。

 では、本来的に日本人はリーダーシップが足りないか。これは日本人の気質というより、日本企業の人事制度に原因があるのではないでしょうか。

 典型的な日本企業では、新卒で入社した社員が定年まで勤め上げるのが前提となっています。そして、入社年次を重ねるごとに任せられる仕事の範囲が拡大していき、その段階ごとに応じてマネジメント技術を磨いていきます。マネジャーの最初はステップは、多くの場合、課長職です。部長の指揮のもと、組織内の調整をしを実際に動かす役回りを期待されます。そして、この課長として優れた業績を残した人が部長となり、部門のリーダー役となります。

 しかし、考えてみると課長として最も求められるのは、組織のマネジメント、業務のマネジメント力です。リーダー役としてではなくマネジャー役を求められるのですが、マネジャー役を上手にこなせる人がリーダーとしてふさわしいとは限りません。部長に昇格して課長時代の輝きを失う人など出てきます。一方でリーダーとして卓越した人は、課長としてマネジャー役を期待されても卓越した業績を残せないでしょうから、部長に昇格する可能性が低くなります。極端な話、スティーブ・ジョブズが日本企業の課長職を任されていたとしたら、うまくこなせたとは思えません。

 課長→部長という昇格ルートが本当に正しいのか。このルートでリーダーシップを発揮できる人材を閉じ込めていないか、いま一度検証してみる必要があります。課長として優秀でなくても、リーダーとしての役割が期待される部長や事業部長、プロジェクト・リーダーに抜擢する。一方で課長として卓越した業績を出し続ける人も、リーダーとしてではなくより大きな領域でのマネジメント役を期待する。

 このような処遇がもっと広まってもいいような気がします。

 ただし、優れた経営者の方は、必ずしもリーダーシップが得意でマネジメントが苦なわけではなさそうです。強烈なリーダーシップを発揮していながら、驚くような実務能力を垣間見せる経営者が実在することも確かです。(編集長・岩佐文夫)