1.立場の違いを最小限に抑える。 たとえばモートンは、メンバー間の経験値の差について極力話さないようにしている。デルーが知る企業幹部は、直属の部下たちによるブレーンストーミング会議への出席を避けている。部下たちがその地位に萎縮して、発言を控えてしまうからだ。

2.自分の弱みを示すエピソードも含め、体験を語る。 自分が間違いを犯した経験を話すことは、弱みにはならない。むしろ、完璧な人間などいないことが伝わり、チームの間で何でも話し合える環境が醸成される。

3.1人ひとりと絆を深める。 信頼は不可欠だ。各メンバーと自分との間に、共通点を少なくとも1つか2つ探し、個人的な関与と配慮を示そう。

4.オープンな姿勢で受け入れ、寛容になる。 チームの意思決定に皆が意見を出すことを奨励し、歓迎しよう。間違いが発生した時には、寛容さを示そう。責めるのではなく、失敗から学ぶことに重点を置く。間違いは必ず起こるので、それが繰り返されないようにすることだ。

●情報を与える
 リスクの高い環境では、情報は多すぎるくらいでよい。情報が多いほど、チームはプロセスへの関与を強く感じ、不安やストレスが軽減される。たとえばモートンは、意思決定がどうなされるかを最初にはっきり説明する。リーダーとしての思い切った決断を余儀なくされる場合も、チーム全員の意見や情報に基づく判断であることが明確にされている。わずかな例外を除いて、モートンはリーダーとして持っている情報をメンバーと共有し、その情報が意思決定にどう使われるかを説明し、いまある情報に基づいてどんな選択肢があるのかを説明する。その結果、チームは絆を感じ、最終的な決定を支持・遵守しようとする。

●決断力と忍耐力を併せ持つ
 時間と情報が限られている状況では、リーダーには決断力と明確さが求められる。しかし即断を強いられていると焦るのは禁物だ。標高8500メートル、予測不能な天候、限られた通信手段、不完全な情報しかない、という状況を想像してみてほしい。チームは不安を感じている。チームの目標を達成し、メンバーを守り、リーダーとしてチームの自信を保つには、アクション・バイアス(行動ありきの姿勢)が必要だ。しかし同時に、感情が高ぶりやすい不安に満ちた状況で、リーダーは無我夢中で行動してはならない。こうした状況に備えるには、常にさまざまなシナリオをチームに前もって示しておくことだ。そうすればリーダーもチームも、不確実性に対処しやすくなる。ただし、極度のストレスに満ちた状況では、誰もがそうしたシナリオを思い出して実行できるわけではないことも覚えておこう。

 頭を明晰にして正しい判断を行なうためには、1歩引いて落ち着いてみるのが最善の方法だ。即断へのプレッシャーを感じずに熟考できる場所を見つけよう。デルーのチームは、ある登山で悪天候に遭い、頂上まであと1時間足らずの地点で、続行か撤退かの判断を迫られた。メンバーは話し合いの末に頂上を目指す決意を固めたが、リーダーは雪の中に座り、しばらく沈黙していた。彼は混沌とした状況のなかで、熟考する場所を見つけたのだ。そして彼の決断によって、チームは引き返した(ありがとう、ギャレット)。

●柔軟さを保つ
 物事を計画通りに進めることにとらわれすぎていると、チームを導くことはできない。いまある想定は、前日までの情報に基づくものだ。計画を立て作戦を練っても、次の日にはすべてが変わってしまうことがある。エベレストでは、メンバーが体調を崩したり、天候が急変したり、別のチームに助けを求められたりする。ビジネスでは、プロジェクトの予期せぬ変更、顧客需要の変動、市場の急激な変化などが起こる。事前に時間や労力を注ぎ込んだからといって、その計画に執着している余裕はない。すぐに変更の必要性を見極め、変更点を説明し、新たな計画を提示しなければならない――たとえそれが失敗や判断ミスを認めることになったとしても。エベレストであれビジネスであれ、リスクの高い環境でチームが生き残り繁栄できるかどうかは、リーダーの臨機応変な姿勢にかかっている。


HBR.ORG原文:Leading Teams When Lives Are at Stake April 1, 2013

■こちらの記事もおすすめします
不測の事態を切りぬける、3つのステップ
フィードバックをうまく機能させる4つの要締

 

D・スコット・デルー(D. Scott Derue)
ミシガン大学ロス・スクール・オブ・ビジネスの経営学教授。

デイビッド・モートン(David Morton)
登山家、写真家。7大陸最高峰で登山隊を登頂に導いた実績を持つ。ファーストアセント(エディー・バウアーの登山ウェアブランド)で登山製品の開発、テスト、改良に携わる。