7.大企業は起業家やベンチャーを食いものにするので、ベンチャー生態系の発展を阻害する。

 答えは☓。自社のマーケットに新規参入する起業家に対して防衛措置を取る大企業は、たしかに多い。しかし、多種多様なプレーヤーがいなければ、活気のあるベンチャー生態系は育まれない。理由はさまざまにあるが、2つを挙げよう。①起業家にとって企業は単なる競合ではなく、重要な顧客になり、販売チャネルにもなる。②ベンチャー企業と大企業の間で起こる優秀な幹部人材の往来が、起業の成功を促進する。起業家および起業家精神は、事業機会の少ない空虚な環境からは生まれない。

8.起業家の意見によれば、どの地域であっても彼らが直面する難題のトップ3は、有能な人材の確保、過度に官僚的な法規制、初期段階での資金不足である。

 答えは◯。ただし、起業家の見解が正しいとは限らない。私は、ボストン、テルアビブ、レイキャビク、ミルウォーキー、サンクトペテルブルグ、ヨハネスブルグ、ブエノスアイレス、リオデジャネイロ、ボゴタでワークショップを行い、上記の問題に関する非公式の調査を実施してきた。いずれの都市の起業家も、有能な人材の発掘、法規制上の官僚的な枠組み、資金の調達を難題のトップ3として挙げ、その原因を「自分たちを取り巻く環境のせい」だと述べている。ただし拙著Worthless, Impossible and Stupidで論じた通り、これらはあらゆる所で起きている現象であり、おそらく生態系の欠陥ではなく、起業の一般的なプロセスにおける何らかの本質が映し出されているのではないだろうか。つまり、起業のプロセスは本質的に、「リスク資本は調達が困難で、不足している」という意識を生み出すのだ。

9.銀行はベンチャー企業に融資をしないため、ベンチャー生態系とは無関係だ。

 答えは☓。たしかに銀行はベンチャー企業に融資をしないし、するべきではない。それは銀行の業務ではないのだ。しかし、たとえ銀行が起業家と直接関わったり、協力したりすることがなくても、金融市場の成熟には寄与し、間接的に投資のバリューチェーン全体に影響を与える。たとえば、銀行は成長段階に入ったハイテクベンチャー企業に投資を行い、潤沢な利益を上げてきた。その結果、初期段階で資金を提供する投資家は、その投資が成功すれば自社を拡大する資金を手にできるという自信を深めることになった。

10.同族会社は、自分たちの「フランチャイズ」を守るために起業活動を妨害している。

 答えは☓。起業を奨励する著名な人々による次のような発言を、私は聞いたことがある。「同族会社が、同族会社であり続けながら規模の拡大を達成し、自由市場への貢献を最大化しているのはなぜだろうか。ほとんどの場合、それは特別なコネや保護を通じて成長を遂げているからだ」。しかし、先進国(例:デンマーク)でも示されているように、同族会社を含め公社、協同組合などさまざまな形態の組織がベンチャー生態系には不可欠であり、その活性化に大きく貢献している。

 あなたのスコアはいかがだっただろうか? 半分以上正解だったら、きわめて優秀な部類に入る。この◯☓テストはほんの出発点にすぎない。起業は経済的にも社会的にも、実に多くのプラスの波及効果を生み出す。しかし政治家、市民社会、企業のリーダー、そして起業家自身が、経済成長をもたらす環境を正しくつくり出す唯一の方法は、ベンチャー生態系に関する現実と迷信を区別し、世の誤解から逃れることだ。そうして初めて、ベンチャー生態系の構築を促進できる。生態系ほど重要なものを、成り行きにまかせてはならない。


HBR.ORG原文:What an Entrepreneurship Ecosystem Actually Is May 12, 2014

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ダニエル・アイゼンバーグ(Daniel Isenberg)
バブソン・カレッジ教授。起業プラクティスを担当。バブソン・アントレプレナーシップ・エコシステム・プロジェクトのエグゼクティブ・ディレクターも兼ねる。