●傾聴する
 ビルは、瞑想時に発揮しているのと同じ集中力をもって他人の話を聞くと、人との交流がたちどころに豊かになることに気づいた。彼が深く耳を傾けていると、相手はそのことをほとんど身体的に察知する。傾聴の姿勢が相手に伝われば、より早く絆が育まれる。すぐにビルは、人生をより豊かで意義深いものに感じるようになった。ルイジアナ州立大学教授のグラハム・ボディが実証研究で示しているように、傾聴はポジティブな対人コミュニケーションを促す最も本質的な振る舞いである(英語論文)。

●問いかける
 これは他者に質問することではなく、自分が生み出した考えに問いを投げかけることである。みずから想起したからといって、その考えが正しいという証拠にはならない。「この考えは真実だろうか?」――ビルは自分にこう問いかける習慣を身に付けた。そして真実であると完全に確信できない場合には、その考えを手放すのだ。彼はこう述べる。「その思考を生み出した自分を前向きに受け入れて、先に進むんだ。この方法にすごく助けられてるよ。ネガティブな思考が生まれた時、問いかけによってそれを手放すことができる。いわば安全弁になるからね。以前の自分にはなかったことだ」

 自分の考えに問いを投げかける手法は、「置き換え」(great undoing)という方法を提唱するバイロン・ケイティが世に広めた(詳細は『ザ・ワーク 人生を変える4つの質問』を参照)。彼女は経験と研究により、ネガティブな思考を押し殺すよりも向き合うほうが効果的であることを示している。真実だと思う考えを無視するのではなく、問いかけることによって正面から見つめれば、真実味がないと判明した考えを捨てることができる。

●専念する
 ビルは目的意識を持って毎日を過ごそうと決めた。人生の目標というようなものではない。もっと小さなこと――日々の行動に、真剣に取り組むということだ。何かをする時は、それだけに集中する。テレビを見ると決めたら真剣に見る。食事をする時には、それを楽しむだけの時間を取る。このビルの行動を支持する研究がある。カリフォルニア大学と米陸軍ネイティック兵士研究開発技術センターの研究者らによれば、知識労働者は1時間に最大36回もメールチェックをしており、これがストレスを増大させているという(英語論文)。1つひとつの活動に専念することで、その瞬間に集中し、その経験を満喫することができる。

 ビルにとって重要だったのは、上記のすべてを小さく始めること――わずかな1歩を踏み出すことだった。なぜなら、ストレスに対処すること自体がストレスになっては意味がないからだ。私たちは物事を変えようとする時、懸命に努力し、新たな取り組みにすべてのエネルギーを注いでしまいがちだ。しかし、そのやり方こそがストレスを生み出した元凶であり、その同じ方法でストレスに打ち勝つことはできない。

 むしろ、成し遂げたい目標よりも常に控え目に始めるのが秘訣である。深呼吸を2分間やりたいのなら、1分間にしておこう。今日は傾聴に徹しようと意気込んでいるなら、1日中それをするのではなく次の会議だけでよい。もっとやりたい、という気持ちを残しておくのだ。目指すべきは持続可能な習慣、つまりストレスのない方法でストレスを軽減することなのだから。


HBR.ORG原文:Reduce Your Stress in Two Minutes a Day November 25, 2013

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グレッグ・マキューン(Greg McKeown)
シリコンバレーでリーダーシップと戦略のアドバイスを行うTHIS Inc.のCEO。2012年には世界経済フォーラムにより「ヤング・グローバル・リーダー」に選出された。著書にはEssentialism: The Disciplined Pursuit of LessおよびMultipliers: How the Best Leaders Make Everyone Smarterがあり、ともにベストセラー。