全社一丸でリーダー候補の
生きたリストを作成せよ

 シミュレーション型アセスメントは、飛行機のパイロット養成用フライト・シミュレーターのビジネス版と考えていただければよい。

 対象者に仮想の企業の職務を実演してもらい、それを複数のアセッサーが多面的に評価していく。シミュレーションとはいえ上位職務で実際に遭遇し得るチャレンジングな課題に取り組むことで、対象者の現在のスキルや対象職務への準備度合いを精度高く測ることが可能になる。その妥当性も立証されている。

 これによって、次の職務に即適応できるか判別できるだけでなく、仮にギャップがあった場合、能力開発を施すことによってどれくらいの期間で準備可能になるかも推測できる。コーチングや職務のアサインメントなどで能力開発を実施しギャップを埋めた暁には、対象者を確信を持って次の職務にアサインできることになる。

 企業のサクセッション・マネジメント施策は、準備万端なリーダー候補を多数抱えておく状態に向けて一貫性が保たれなければならない。ここで大事なのは、選抜や育成をサイロ化しないということだ。なぜならタレントは社内共有の資源であるため、部署や組織横断的にアサインすることで、さらに伸ばしていくことが可能となる。

 多くの企業では、ヒューマンリソース(HR=人事部門)がサクセッション・プラン実施の役割を担う。ところが、その計画は机上で立てられ、その後は放っておかれ、いざポストに空きが出たときに慌てて埃をかぶった計画が取り出されるということも珍しくない。しかし、サクセッションは企業の将来を左右する重要な取り組みで、日々更新される生きた資料であるべきだ。そのためにも経営トップの関与は欠かせない。

 伝統的な日本企業に関して言えば、ジョブ・ローテーションでの異動のみで、戦略的に人を動かしたがらない傾向があることが気になる。年功序列による順番待ちが常態化し、過剰すぎるほど準備万端でないと有能な社員が昇進する機会はないように思える。海外での売上高比率が年々高まる企業では、程度の差こそあれHRもグローバル化することが避けられないのではないだろうか。

 次回(最終回)は、経営トップやHRに向けて、私自身のHR実務をもとにしたアドバイスを贈りたい。

(第5回 了) 

 

 

■トム・ペダーセン Tom Pedersen
コーン・フェリー
リーダーシップ&タレント・コンサルティング シニア・パートナー

アメリカ・カリフォルニア州出身。新生銀行のCLO(チーフ・ラーニング・オフィサー)、シンガポールDBS銀行のラーニング&タレント・ディベロップメントのヘッドとして、人材戦略の立案やヒューマンリソース実務を主導。慶應義塾大学で教鞭を執った経験も有する。2013年より現職。

 


 

コーン・フェリー Korn Ferry
世界40ヵ国、80を超える主要都市に展開する、世界最大級規模の人材コンサルティング会社。1969年にアメリカで創業、エグゼクティブ・リクルーティングのトップ企業に。近年は、有能なリーダーを育成することで人材や組織の課題を解決し、企業目標達成を支援するリーダーシップ&タレント・コンサルティング分野へと業容を拡大。日本においても40年以上の実績を持つ。www.kornferry.jp