科学的根拠に基づく
人材育成にシフトせよ

 マチュリティとアジリティが共に高い≪成長主導者≫は、コーン・フェリーのデータベースに照らし合わせると組織内に数パーセント程度しかいないことが多い。

 マチュリティまたはアジリティのいずれかが高い≪成長受容者≫と≪成長創出者≫は一定の割合でいるはずなので、これら三つのセグメントをスマート・グロース・リーダー候補として問題ない。

 これらの人材に対しては、いわゆるタフ・アサインメント(困難な課題を割り当てること)を含む、ストレッチした職責を課し、それにコーチングを加えることによって改善箇所にピンポイントで対応し、即戦力化を図っていくことが可能だ。

 中程度のマチュリティとアジリティを有する人材に関しては、中長期の視点からリーダーとして育成していくことが必要となる。マチュリティとアジリティのいずれも中~低の人材については、リーダーというよりもプロフェッショナルとしての活用を検討することが必要かもしれない。

 この手法を全社員対象に実施し、若手社員の中から高い潜在能力を持つ人材を網に掛けるという使い方も可能だ。経営トップがこのような施策を主導することで、人材を可視化し、棚卸しすることは、将来の成長に向けた人材戦略を構築していく上で大変重要となる。

 私が見聞きした限りでは、日本企業では上司の主観的判断で人材を配置することが少なくないようだ。それが合理性を有した時代があったのも事実だろう。しかし、パラダイムが変わった現在のグローバル・ビジネス環境においては、ここで示したような客観的な手法で人材を選抜・育成していく手法へと移行していくことが求められているのではないだろうか。

 次回は、サクセッション・マネジメントなどにおいてリーダー候補を実際に上位職務に登用する際に見落とされがちな、ある要素について紹介したい。

(第4回 了) 

 


 

■トム・ペダーセン Tom Pedersen
コーン・フェリー
リーダーシップ&タレント・コンサルティング シニア・パートナー

アメリカ・カリフォルニア州出身。新生銀行のCLO(チーフ・ラーニング・オフィサー)、シンガポールDBS銀行のラーニング&タレント・ディベロップメントのヘッドとして、人材戦略の立案やヒューマンリソース実務を主導。慶應義塾大学で教鞭を執った経験も有する。2013年より現職。

 


 

コーン・フェリー Korn Ferry
世界40ヵ国、80を超える主要都市に展開する、世界最大級規模の人材コンサルティング会社。1969年にアメリカで創業、エグゼクティブ・リクルーティングのトップ企業に。近年は、有能なリーダーを育成することで人材や組織の課題を解決し、企業目標達成を支援するリーダーシップ&タレント・コンサルティング分野へと業容を拡大。日本においても40年以上の実績を持つ。www.kornferry.jp