ロメッティはこう述べた。「素早く変革できなかった領域で、我々は苦戦しました」。「あらゆるレベルで、よりいっそうステップアップして問題に取り組む必要があります。価値を理解して承認を得るまでの作業に、時間をかけすぎていたのです。その結果はどうでしょう? 変革は中途半端な成果に終わりました」

 その意図は、混乱と不確実性の渦中に明確さをもたらすこと、率直で誠実な会話を社員から引き出すこと、新しくより優れたビジネス手法の探究と実行を促すことであった。つまり、ロメッティはこのスピーチで問題を別の視点から明らかにし、コーチングを行い、方向転換を促していたのだ。

 2つ目のエピソードは、AOLのCEOティム・アームストロングにまつわるものだ。彼は2013年8月、同社傘下の地域ニュースサイト「パッチ」の従業員1100人に向けて電話会議を行った。パッチは赤字が続いており、人員削減の必要に迫られていた。スピーチの冒頭は間違いなく、「愛のむち」として伝わるように意図されていたが、実際は激励というよりも断然、脅迫的な印象を与えた。アームストロングは再三にわたり、「パッチに全身全霊を注いでいないスタッフは、誰であれ、辞めるべきだ」と繰り返した。そして突然、同じ会議室にいたクリエイティブ・ディレクターのアベル・レンズを解雇した。

「写真の撮影はやめなさい」に続いて、間髪を入れず「アベル、君はクビだ。ここから出て行け」と言い放ったのだ。

 新聞報道によれば、背景にレンズの仕事ぶりに対するアームストロングの不満があったという。重大な会議中に、レンズが話を聞くより写真を撮っているのを目にして、堪忍袋の緒がついに切れたというわけだ。だが、いかなるリーダーであれ、このような場で個人的にフィードバックを与えたり、社員を解雇したりすべきではない。緊張と不安が充満していた状況で感情に突き動かされた結果、アームストロングはさらなる恐怖と不信を生み出してしまった。電話会議に出席していた他の従業員1099人は、「これは自分にも起こりうる」と考えたかもしれない。この種の反応は、脳を「闘争」または「逃避」モードに追い込み、論理的思考や問題解決、創造的思考を低下させる。そのような状態では、よい変化を生むために一丸となって取り組むように呼びかけることなど、到底できない。

 リーダーとして、あなたが何をどのように話すかは重大な影響力を持つ。会社が困難や危機に直面している時は特にそうだ。リーダーがやるべきは、何が正しいことなのか、よいことなのかを示し、人々を活気づけることだ。さもなくば、社員たちの能力は発揮されない。

 以下は、社員を鼓舞し協力を要請したいクライアントに私が勧めているポイントだ。

●組織全体に語りかける。やり方をどう変える必要があるのか、そしてなぜその変化が重要なのかを社員たちに示して意識させる。変革が実現したらどうなるのかを説明し、社員が自身の果たせる役割を自発的に考えるよう導く。
●真実を告げる際に求められる、誠実な話し方の見本を示す。相手を非難することなく率直に話すよう社員たちを促す。明確で率直な言葉を使い、自分の感情を客観的にとらえる。恐怖や不満を決して生じさせてはならない。
●未来に焦点を合わせる。コラボレーションとイノベーションのよりよい方法について、組織の全員からアイデアを聞きたいという意図を説明する。双方向の会話を喜んで受け入れることを明確にする。

 脅しや叱責によって社員に努力を促しても、彼らを味方につけることはできない。共通の目的を持って成功への決意を固め、一致団結することを、社員みずからが望むよう導く必要があるのだ。偉大なリーダーは、このことを知っている。


HBR.ORG原文:The Right Way to Rally Your Troops September 13, 2013

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ジュディス・E・グレイザー(Judith E. Glaser)
ベンチマーク・コミュニケーションズのCEOおよびクリエイティング・ウィー・インスティテュートの会長。リーダーシップ、組織文化、ブランドの課題に神経科学の理論を適用し企業を支援している。著書にConversational Intelligence (BiblioMotion, 2013)などがある。