GEイメルトに見る
リーダーシップのあり方

 そもそも、「強い経営変革力などないほうがいい」と言う人もいます。無印良品を展開する良品計画の松井忠三会長もその一人です。

 松井会長に言わせれば、カリスマ型の経営者が目立つようでは組織としてはまだまだ未熟。社員一人ひとりが考えて判断する仕組みそのものを変革力とする経営こそが理想だということになります。

 それは、トップの重要なミッションの一つです。この点で最も長けている経営者の一人がGEのジェフリー・イメルトでしょう。

 イメルトには前任のジャック・ウェルチのようなカリスマ性も、一見してすぐ分かるような切れ味の鋭さもありません。にもかかわらず、ウェルチをしのぐほどの業績を上げられるのはなぜか。私は「質問力」にその鍵があると見ています。

 彼のミーティングに出席したことがあります。いったい何を話すのかと楽しみにしていたら、自分ではあまり発言しないので、意外に感じた記憶があります。

 その代わりにイメルトは、問題を提示して、出席者であるわれわれにその場で考えさせました。われわれが発言すると、さらに本質をえぐるような鋭い質問を投げかけてきます。そうして相手の気付きを促すのです。

 ウェルチが常に、自分が導き出した一番正しい答えを言い渡していたのとは、まさに対照的です。

 強い牽引力とカリスマ性を持つウェルチを20世紀型のリーダーとするなら、自らは黒子に徹して組織力を高めようとするイメルトは、21世紀型のリーダーといえるでしょう。

 日本企業には実は、こうしたリーダーが多く存在します。前述の良品計画の松井会長もそうですし、海外展開の成功で快進撃が続くユニ・チャームの高原豪久社長も、このタイプです。

 一見すると地味ですが、成長エンジンとなる変革力を社員に埋め込み、組織全体を底上げするところに、このリーダーシップの神髄がある。

 スティーブ・ジョブズ亡き後のアップルを例に取るまでもなく、カリスマ経営者の存在は、企業の持続的成長にとって重大なリスク要因となります。ファーストリテイリングの柳井正CEOは、それを誰よりも理解しているからこそ、必死になって次世代リーダーの育成に取り組んでいます。

 優れた経営者がいたほうがいいのは確かですが、ないものねだりをしてプロ経営者の不在を嘆くよりも、組織全体のパワーを高める工夫と努力をする。これが、今、日本企業のトップが取り組むべき重要課題です。