戦略は、本来、現場が考え抜いて生み出すものです。

  製鉄機械事業で世界のトップ4に入る三菱日立製鉄機械は、2000年、三菱重工の当時の担当事業本部長だった宮永俊一氏の、強い意志と考え抜かれた戦略によって誕生しました。筆者は三菱商事勤務時代の30年前に、主任だった宮永氏とともに海外のプロジェクト受注合戦を戦った経験がありますが、同氏の現場感覚に基づく洞察力と実行力は、世界一流のものでした。当時から世界的な合従連衡の動きが加速する中で、自分が預かるこの事業で勝ち残る道を必死に追い求めた末に、日立との事業部門の統合という答えが得られたのだと思います。今年5月には、さらにシーメンスの製鉄機械事業も掌中に収め、トップ3入りを果たしています。

 現在、三菱重工社長を務める宮永氏が出世を第一に考える人であれば、日本から製鉄機械メーカーが消えていたかもしれません。トップダウンの戦略では見抜けなかったであろう、業界再編を伴う事業再生を、現場の強い意志と広く深い洞察力が実現した好例といえるでしょう。

MBA流「経営のプロ」は
日本企業を成長させたのか?

「経営変革のできない企業はグローバルでは勝てない」

 欧米のコンサルティング会社はこう言って、トップに決断を迫ります。しかし実際のところ、強靭な経営変革力を持つトップは、日本には数えるほどしかいません。

 そこで、MBA出身の若くして経営の経験を積んだプロの経営者が日本にも必要だという話が、ひところ盛んに言われました。欧米流の経営人材像です。

 しかし、本当にそうなのでしょうか。今の日本企業に必要なのは、頭でっかちなリーダーではなく、成果を生むリーダーです。小ざかしい理論や知識は、むしろ害になることさえあります。

 日本には、銀のスプーンをくわえて生まれ、そのまま経営者になる人はほとんどいません。多くは現場のたたき上げです。現場を知り、実践を通じて育ったリーダーが、日本企業の優れた「オペレーション力」の源であり、世界に誇れる強みでもあります。

 ところが、そういうたたき上げの人が、経営者になった途端に変貌してしまうことがあります。経営者としての教育を受けていないという自信のなさからか、欧米流の経営論や手法を学び、無理やりまねしようとするのです。

 こういうリーダーが、十分な成果を上げることはまずありません。本来の強みが失われてしまうからです。

 ではどうするか。欧米流と日本式の両方の良い点をうまく組み合わせる、ハイブリッド型を志向するのです。