適切な対処法は、昨今の経営幹部がめったに実践していないこと、つまり「ひと休みする」ことだ。「無理してでもやり遂げよう」とする人があまりにも多い。しかし、予備のエネルギーが魔法のように現れることはありえない。1日中がんばり通そうとすれば、パフォーマンスの質は次第に落ちていく。

 複数の実験で明らかにされているように、脳がエネルギーを使い切ってしまうと認知能力が低下する。するとミスや物忘れ、頭が真っ白になる瞬間が増えてくる。ある企業幹部は、「ミーティング中に、心ここにあらずという状態になってしまうことがある。何かのチャンスを逃したのではないかと心配になる」と言っていた。

 経営幹部の抱えるプレッシャーは多大なもので、パフォーマンスを高める薬に頼ろうとする人が出てくるのも無理はない。ある弁護士は、注意欠陥障害でもないのにその薬を毎日服用しており、かかりつけの医師に「これを飲まないと契約書が読めない」と打ち明けたという。

 しかし、そんな人に役立つ、集中力を高めるための合法的かつ健康的な方法がいくつかある。その1つは瞑想だ。あらゆる瞑想法は認知科学の観点から見れば、集中力を訓練するためのものである。集中力を司る脳の機能を高める方法として人気が高まっている「マインドフルネス」(いまこの瞬間に起きていることに、全意識を集中させるトレーニング法)は、瞑想から宗教色を取り除いたものだ。

 マインドフルネスの背景にある神経科学では、「神経可塑性」という考え方が重要な役割を果たしている。つまり、繰り返し経験を重ねると脳の回路の一部が強化され、他の回路が弱まっていく。脳が変化していくということだ。

 集中力は心の筋肉のようなもので、適切な訓練によって強化できる。心の中のトレーニングジムで集中力を高める基本的な訓練法は、たとえば自分の呼吸など、何かに的を絞り意識を集中することだ。集中が的から逸れたら(必ずそうなる)、今度は自分の心がさまよっていることを意識する。これには、思索の糸にとらわれずに自身の思考を認識する能力、つまりマインドフルネスが必要になる。

 それから意識を呼吸に戻す。ウェイト・トレーニングの反復運動のようなものだ。エモリー大学の研究者らは、この単純な訓練によって、集中力に関わる神経回路の接続が実際に強まると報告している。

 もう1つ別の方法もある。それを「ラテン・ソリューション」と呼びたい。

 私が最近訪れたバルセロナでは、ランチタイムになると店も会社もほとんどがシャッターを降ろしてしまう。従業員が自宅に帰って食事を摂り、できれば少し昼寝もするためだ。日中に短時間でも休むようにすれば、脳は元気を取り戻し、残りの時間を集中して過ごせるはずである。


HBR.ORG原文:To Strengthen Your Attention Span, Stop Overtaxing It November 28, 2013

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ダニエル・ゴールマン(Daniel Goleman)
心理学者、科学ジャーナリスト
ラトガーズ大学のConsortium for Research on Emotional Intelligence in Organizations共同創設者。エモーショナル・インテリジェンス(EI:心の知性)の提唱者で、著書に『EQ こころの知能指数』(講談社)、『エコを選ぶ力―賢い消費者と透明な社会』(早川書房)などがある。