そこで被験者の学生の数を増やして、もう1度実験を行った。研究所に来た者に5ドル払い、アンケートを取り、利得と損失のいずれかについて考えながらマグかペンを選ぶように頼んだ。今回も全員がマグを選んだ。

 ここから研究者は前回と違うことをした。マグの正しい価格を書いた紙片を封筒に入れておく。そして被験者に封筒を見せ、こう説明した。あなたは希望すればマグを買うことができる。ただしそのためには封筒に入っている価格と同じか、それより高い金額を提示しなければならない(入札価格を提示して結果を待つという、サイレント・オークションと似たやり方だ)。価格より低い金額を申し出た場合、マグを買うことはできない。封筒に入っている価格と同じかそれ以上の金額を提示すれば、その提示額でマグを買うことができる。次の表は、学生たちが手持ちの5ドルからマグにいくら払ってもよいと判断したか、条件ごとにまとめたものである。

   (注:青字の価格はモチベーションの焦点に一致した場合)

 したがって、先ほどの疑問の答えは「イエス」である。人は自分のお金を使う場合でも、モチベーションの焦点に合った方法で判断をした時には対象の価値をより高く――今回はおよそ70%も高く――評価するのである。モチベーションの一致という体験によって、現実的な、偽らざる金銭的価値が示されるのだ。

 トーリー・ヒギンズと私は共著Focus: Use Different Ways of Seeing The World For Success and Influence (未訳)の調査を行うなかで、他の数多くの製品に関しても同様の知見が得られていることに気づいた。たとえば、消費者は各自のモチベーションの焦点に合った方法で自転車用ヘルメットを評価すると、20%ほど高い支払意思額を示した(関連論文)。別の研究でも、同様の一致を体験した消費者は、読書灯に対して40%も高い金額を提示している(関連論文)。

 さらに複数の研究によれば、消費者がモチベーションの焦点の一致を体験しながら製品を選んだ場合、その後も自身の判断に対する満足感を持ち続けるというのだ(関連論文)。これは人々を騙してより多く支払わせることとは違う。受け手が促進型か予防型かを考慮することで、本人にとってよりよい製品を体験する機会を提供しうるのだ。すべてはメッセージの送り方次第である。


HBR.ORG原文:How to Get Customers to Value Your Product More May 1, 2013

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