フェイスブックがマインドセットの普及に注力していることに我々が気づいたのは、2007年末から2008年の初めにかけてのことだ。研究者兼コンサルタントのベス・ベンジャミンと私は当時、同社の人事責任者で25歳だったクリス・コックスに何度かインタビューしていた。コックスは30番目の社員でプログラマーとして入社後、ニュースフィード機能の構築に携わるなど多数の実績を上げた。にもかかわらず、ザッカーバーグは彼に人事を担当するよう要請した(それまでに2名ほど、昔ながらのやり方をする前任者がいた)。なぜならコックスは、フェイスブックが成長していく過程でザッカーバーグが組織に根付かせたいと考える優先事項、能力、信念をすべて体現していたからだ。新入社員へのオリエンテーションを行うコックスを見て、我々はこの起用が賢明な判断だと納得した。同社がその後どれほど拡大しうるかを考えれば、初期採用組の社員が信念と行動様式を共有することは不可欠だった。それらを植え付ける役目は外部の者や非技術者ではとうてい不可能で、コックスのほかに適任はいなかった。

 人事を担う彼が注力していた点は、その後に我々も他のさまざまな企業で見た手法と共通していた。将来のスケールアップを迅速かつ効果的に行う土台をつくるために、適切な人材が見つかるまで十分に時間をかけること。そして新入社員には正しい(自社が依って立つ)マインドセットを徹底的に理解させることだ。

 フェイスブックが新人のエンジニアと技術スタッフに共有すべきマインドセットを浸透させる方法は、同社が拡大するにつれてより体系的で厳密になっている。2011年にコックスがハギーと私に説明したところによると、同社では新規ユーザーが50万人増えるごとに、エンジニア1名を追加する必要があると判明したため、採用の大きなプレッシャーに絶えず追われていた。後日、グーグルのシニア・バイス・プレジデントであったショーナ・ブラウンもまったく同じ状況に置かれたという話を聞いた(ブラウンは同社を社員数2000人から3万人に成長させるうえで重要な役割を担った)。プロクター・アンド・ギャンブルのバイス・プレジデント(デザイン・イノベーションおよび戦略担当)であったクラウディア・コチカもまた同様の経験を述べている。最初は1つのプロジェクトに取り組む少人数のチームにいた彼女は、最終的には300人のイノベーションの専門家を多数の事業で活躍させるまでになった。

 フェイスブックには遵守すべきことやタブーに関する独特の信条があるが、それを新人に徹底的に理解させ忠実に実践させるために、思い切った手段をとっている。厳しい面接試験をくぐり抜けてきた新米エンジニアたちは、「ブートキャンプ」と呼ばれる6週間の研修を受ける。この研修は(人事部ではなく)エンジニアによって企画・運営され、新米エンジニアがフェイスブックの最も重要な信条である「素早く動き、破壊せよ」(Move fast and break things.)をすぐに身につけられるように設計されている。

 コックスの説明によると、ブートキャンプの開始早々に新米エンジニアはソース・コードに取り組み、その際にコードの変更がリアルタイムで反映されることを告げられる。「手を付けてみて、つかんで、それを折り曲げる」よう促されるのだ。新米エンジニアの最初の週が成功に終わったかを見極める基準は、サイトに自身が加えた変更を家族や友人に見せることができるかどうかだ。たとえばこんな具合である――ある新米エンジニアの父親が電話で「フェイスブックのドロップダウンメニューがちょっとおかしい」と言う。翌日そのエンジニアは父親に電話を返し、こう伝えた。「お父さん、解決しておいたよ。もうチェックした?」(ブートキャンプの概要はこちらの英文記事も参照。)