2.批判と称賛のバランスをとる
 優れたフィードバックとはすなわち「率直な批判」であると思われがちだが、それで十分ではない。併せて必要となるのは「有意義でポジティブな評価」(称賛)だが、えてしてこちらが欠けてしまいがちだ。どちらか一方だけではフィードバックとして不十分である。

 ポジティブなフィードバックの授受を妨げている要因はいくつもある。自分の言葉は心にもないお世辞と受け取られるのではないか、という心配。相手の言葉はお世辞にすぎないのではないか、という邪推。ご機嫌取り、あるいは弱い人間に見られるのではという危惧もある。または、単に称賛することに不慣れなためうまくできない、なども理由だ。

 しかしベルギーのゲント大学の最近の研究によると、ポジティブなフィードバックは受け手の自己開発を促進することがわかっている(関連論文)。さらに、ワシントン大学の心理学者ジョン・ゴットマンによる長期的な夫婦関係についての研究(『結婚生活を成功させる七つの原則』第三文明社)によると、最も良好な関係にある夫婦の間では、たとえ喧嘩中でもポジティブな言動とネガティブな言動の比率は5対1という結果が出ている。誠意あるポジティブなフィードバックが人間関係を強めるのは明らかであり、練習が必要だ。

【批判と称賛のバランスを確立するには?】

●ポジティブなフィードバックを伝えたら・・・・・・そこで対話を終了する
 よくあるのが、後に続く批判のインパクトを和らげるためにポジティブなフィードバックを利用するケースだ。このやり方では、せっかくの称賛も空しく響いてしまう。

●小さなことから始める
 大きな成果だけが称賛に値すると思われがちだが、それでは日常的にポジティブなフィードバックを行うのは難しい。どんなに些細な行動でも奨励に値するのであれば注意を向け、感謝の気持ちを伝えよう。

●能力ではなく努力を称える
 スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドゥエックの研究によると、人を称賛する際に、(取り組みの成否にかかわらず)それまで払った努力を認めてあげれば、強い意志や困難にくじけない心が育まれる。反対に資質や能力ばかりをほめていると、リスクを避けたがる、打たれ弱い人間になってしまう(関連記事「いい子だとほめられた人ほど自信をなくしやすい」も参照)。