一方、促進焦点(promotion focus)を持つ人々は、目標を達成したら「何を得られるか」――成功によってもたらされる進歩や報酬を重視する。こちらの人が予防焦点型と比べて優れているのは、創造性やイノベーション、スピード、チャンスをとらえる能力だ。これらはまさに、ビジネスの世界で(そして西洋の文化全般においても)評価され称賛されることが多い特質である。

 しかし、マーズ・クライメイト・オービターの事例が見事に示したのは、NASAのラボでは予防的な考え方が十分に機能していない(少なくとも当時はしていなかった)ということだ。これは驚くに当たらない。何といっても彼らはロケット科学者なのだから。彼らが人生を捧げている仕事は、宇宙の探索である。これ以上に促進焦点が強いものがあるだろうか。彼らは、「これまで誰も行ったことがないところへ行こう」という言葉をほとんど体現しているのだ。

 ビジネスの世界でヒーローとされるのはたいてい、リスクを恐れない促進志向のイノベーターのように思える。しかし、予防志向のヒーローなどいないわけではない。単に称賛されることがないだけである。大事故を防いだとして、起こらなかったことに対する功績を称えられることはまずない。誰も「ボブ、君がこの単位をインチからセンチメートルに変換してくれたから、1億2500万ドルを無駄にせずに済んだし、とんでもない恥をかかずに済んだ。頼りになる奴だぜ!」などと言ってはくれないのだ。

 そんな言葉をかけられなくても、予防焦点型はせっせと働き、黙々と慎重に、物事が想定通りに進むよう努力する。飛行機が空中分解しないように継ぎ目をチェックし、消費者の買う薬が工場で汚染されていないことを確認し、あなたが注文したスキム・モカ・ラテが本当にノンカフェインか確かめる。でないと、朝4時まで眠れずにテレビの天気予報を眺めるはめになるからだ。

 もしあなたが物事をスムーズに進めることを得意とし、実際に物事がスムーズに進んでいるなら、悲しいかな、あなたの仕事はおそらく気にとめてもらえない。その仕事に見合った称賛を受けることはたぶんないだろう(ただし、誰かがめちゃくちゃにしてしまった仕事を引き継いだ時は感謝されるだろう――少なくともしばらくの間は)。

 だから、物事がうまくいかない時だけでなく、順調に進んでいる時にもよく注意を払ってほしい。目標に対する考え方には2つの種類があり、それによって人の強みも2種類に分かれる。そして、チームや組織が成功するためには、この両方の強みが必要なのである。


HBR.ORG原文:Celebrate the Mistakes that Don’t Happen April 18, 2013

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ハイディ・グラント・ハルバーソン
(Heidi Grant Halvorson)

コロンビア大学ビジネススクールのモチベーション・サイエンス・センターの共同ディレクター。