これらの教訓がなぜ重要なのか

 公平性に関する感覚、そして不公平を罰する傾向は、私たちの本能に根差している。人間同士のやり取りにおけるその本能が、企業との関係にもそのまま適用されるのだ。

 ネットフリックスがやるべきだったのは、公平性に関する反応を予測し、潜在的なコストを見積もることだ。そして分割をしないという選択や、分割した場合でもリスクを軽減する何らかの方法を考えることができたはずだ。自社が何を、どんな理由でやろうとしているのか十分に説明し、公平性を訴える形でメッセージを発信すべきだった――たとえば以下のように。

●ストリーミング動画のライセンス料は、コンテンツ所有者との再交渉によって上昇しています。このコストはDVD利用者には関係ありません。したがってDVDにもコスト上昇を反映させるのはフェアではないため、料金体系を分割します。

●ほとんどのお客様は、ストリーミングかDVDのどちらか一方を集中的に利用しています。したがってサービスの分割によって、多くの皆さまの料金は下がりお得になります。

●当社はサービスの分割によって、品質のさらなる向上に努めることができています。おかげさまで最近、当社は多数の新作映画のライセンスを取得しました。

 サービスの変更時に過ちを犯すのは、もちろんネットフリックスだけではない。似たようなアンバンドル化を行う企業は、いつでも顧客の反発を招く恐れがある。のみならず、バンドル化や定期的な値上げ、サービス変更の実験もリスクを伴う。ただし、公平性を確保できればイノベーションの機会につながる。

 顧客対応のまずさや公正を欠く方針・慣行で知られる業界では、顧客は反発の機会を常にうかがっている。たとえばフィットネスクラブや一部のソフトウェア・サービスは、退会を防ぐための不公平な規約や、誤解を生みやすい更新規約によって顧客離反を招く恐れがある。

 以前にハーバード・ビジネススクールのある教授が、私にこう助言をくれた。「ビジネスではけっして“公正”(fair)という言葉を使ってはいけない。常に“適正”(reasonable)と言いなさい」。これは交渉のアドバイスとしては役に立つが、重要な点を見逃している。公平性とは人の本能に根差すものであり、それがビジネスに及ぼす影響を無視すれば高い代償を伴うのだ。


HBR.ORG原文:Understanding Fairness is the Key to Keeping Customers October 7, 2013

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N・テイラー・トンプソン(N. Taylor Thompson)
ハーバード・ビジネススクールの研究機関、フォーラム・フォー・グロース・アンド・イノベーションの研究員。