日本企業が今こそ決別すべき
「習慣」と破るべき「殻」

 1人はローソン会長で、先日、この10月よりサントリーホールディングス社長に就任することが発表された新浪剛史氏だ。マーケットを読み、多種多様な店舗を展開していく手腕は非常に戦略的だ。もう1人は、ファーストリテイリング会長の柳井 正氏だ。ユニクロという世界ブランドのみならず、独自のエコシステム(生態系)を短期間でつくり上げた手腕は見事としか言いようがない。

 2人に共通するのは、常人とは違うレンズで世の中を見透し、マーケットに成長スペースを見付け、戦略を徹底的に遂行し、結果を出している点だろう。しかしながら、これらカリスマ経営者に限らず、スマート・グロース・リーダーというのは、実は組織のいたるところに存在する。

 すべての企業は自問してほしい。「スマート・グロース時代に成果を挙げられる、次代のリーダーが自社にいるだろうか」と。

 控えめな経営者は、「優れたリーダーなど数えるほどしかいない」と言うかもしれない。「日本の教育はリーダーよりもフォロワーを育てるようにできている」とする意見もある。

 本当だろうか。

 たしかに、アメリカは国を挙げてリーダー育成に注力している。しかし、結果的に低所得層から高所得層へと富を移転させているだけのリーダーが、優れているなどと果たして言えるだろうか。断言するが、日本よりアメリカの方が、よりよいリーダーを多く輩出するなどということはない。世界中のどんな国・地域でも、一定割合で優れたリーダーとしての潜在能力を持つタレントはいるはずだ。

 日本企業に問題があるとすれば、優れたリーダーになるポテンシャルを持つ人材がいても、実際にリーダーを選抜する基準や手法が硬直的で閉鎖的な傾向があるということだ。

 いまだに年功序列を維持したり、上司による引きといった情緒的な空気に左右されたりしているように見受けられる。また、女性や外国人の活用・登用にも依然消極的である。あまりの閉鎖性やスピード感のなさに、将来会社を背負って立つべき若いタレントが日本企業を飛び出していく姿を、私は数多く見てきた。

 日本企業が本当に世界で戦える組織を構築したいのであれば、これら旧来の慣習とは決別し、閉塞という「殻」を破らなければならない。

 本連載では、企業トップ自らが社内のタレントを発掘・育成し、そのリーダーシップが発揮されることで周囲の人に影響を与え、さらに多くの人を巻き込むことによってついには変革を起こす、という「リーダーシップ&タレント・コンサルティング」の手法をお伝えしていきたい。

(第1回 了) 


 

■トム・ペダーセン Tom Pedersen
コーン・フェリー
リーダーシップ&タレント・コンサルティング シニア・パートナー

アメリカ・カリフォルニア州出身。新生銀行のCLO(チーフ・ラーニング・オフィサー)、シンガポールDBS銀行のラーニング&タレント・ディベロップメントのヘッドとして、人材戦略の立案やヒューマンリソース実務を主導。慶應義塾大学で教鞭を執った経験も有する。2013年より現職。

 


 

コーン・フェリー Korn Ferry
世界40ヵ国、80を超える主要都市に展開する、世界最大級規模の人材コンサルティング会社。1969年にアメリカで創業、エグゼクティブ・リクルーティングのトップ企業に。近年は、有能なリーダーを育成することで人材や組織の課題を解決し、企業目標達成を支援するリーダーシップ&タレント・コンサルティング分野へと業容を拡大。日本においても40年以上の実績を持つ。www.kornferry.jp