真実がテーブルの上に置かれれば、次に何が起きるかわからない。この不安定な状況を通り抜けるのが厄介な部分である。私たちが真実を隠し続けるのは、未知のものへの恐怖とそこに内包されるリスクが理由なのだ。

 ならばその恐怖を乗り越えるには、どうすればよいのか。「勇気」を奮い起こすことだ。単純だが、簡単ではない。

 最初に、自分が実際に何を見て、何を考え、何を感じているのかという難しい問いを、自問しなくてはならない。あなたは何かの実態ではなく投影を見ているのではないだろうか? 自分の問題なのに、他者を責めてはいないだろうか? それとも、物事をありのままに見ているのだろうか? 言い換えれば、真実を追求するということだ。まずは自分自身に正直になること。

 次に、自分の考えに自信を持てたなら(あるいは持てなくても)、共感を働かせ、相手に配慮しつつ率直に向き合うこと。あなたにとっての真実を、お詫びや控え目な表現、否定でごまかしてはいけない。そんなことをすれば、木をそっと揺さぶっただけになり、ボールは絶対に落ちてこない。反対に、あまりに激しく無分別に揺さぶれば、枝葉までもが落ちてしまう。「私はこのように見て、感じ、考えています」という言い方で、自分の考えを他者と共有しよう。明確に述べ、言葉に責任を持つ。そして相手が反応するための時間と余地を与えよう。

 最後に、自分の要求を通す代わりに、相手に何らかの方法で答えさせよう。あなたは自分の立場を明らかにし、相手に配慮し、正直であることによって、自身の責任を果たした。それ以外のことはコントロールできない。しかし真実の棒を使ったのだから、ボールを木から落とせるだろう。

 先日、ポールから電話があった。以前話した時よりも、仕事に熱中しているように感じられた。CEOと話をしたという。「CEOがしておられることは、私にはこのように見えます。それによって、私の仕事がこのようにやりにくくなっています」、「~と言われたようですが、受け取る側には~と聞こえます」、「先週、~をしておられましたが、それはわが社の評判を傷つけるものでした」等々を伝えたそうだ。

 最初のうち、ポールは落胆していた。CEOは耳を傾けてはくれたが、形だけのように感じられたからだ。事態は何も変わらなかった。ところが1カ月後、事態は変わり始めたようだ。CEOは自分の限界を理解したようで、得意なことに専念するようになっているという。

 いや、それだけではない。ポールも変わった。真実を伝えたことによって、ポールのわだかまりはほぐれ、以前ほど不満を持たなくなった。CEOに対しても仕事に関しても、さらには生活全般に関しても、一層積極的に取り組み、リスクを恐れなくなっている。勇気がさらなる勇気をもたらしたのだ。これは真実を語ることの恩恵の1つである。

「今日、すごいことがあったんです!」電話の向こうでポールの声が響く。「CEOは私のために会議の場を設けてくれました。私はそこで力を発揮しています。彼とはとてもうまくやっています」

 木に挟まっていたボールは戻り、再びゲームが始まった。

※個人名と細部は変更している。


HBR.ORG原文:When the Truth Is Your Only Chance November 19, 2013

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ピーター・ブレグマン(Peter Bregman)
CEOおよびリーダーにアドバイスを行う戦略コンサルタント。最新刊は『最高の人生と仕事をつかむ18分の法則』(日本経済新聞出版社)。