子どもの頃に球遊びをしていて、ボールが木の枝に挟まったことがあるはずだ。その時の選択肢は3つだった。イライラしながらボールを眺める(その仕事を続ける)、あきらめて別の遊びをする(退職する)、長い棒切れを探し出し、ボールを木から落とす。

 真実が、その棒切れだと考えてみよう。

 ポールが真実に向き合うリスクを取らなければ、何も変化しない。退職すれば、いずれ別の会社で似たような状況に出くわすだろう(よくあることだ)。そしてまた辞めることになる。ボールは木に挟まったままだ。

 しかし、真実という棒は物事を変える。自分の考えをCEOに伝えるには、安全でいたいという気持ちを捨てる必要がある。じっくり考え、言葉を選び、自分の負うべき責任を引き受け、慎重に伝えなくてはならない。

 しかし、どれほど気まずい思いをしようとも、恐れる必要はない。怖いのはCEOの反応が読めないことだ。激しく非難してくるかもしれないし、徹底的に否定するかもしれない。ポールをクビにする可能性もある。

 大事なのは、ポールにとって本当の意味でのリスクは存在しないという点だ。なぜなら、ポールはどのみち辞めるつもりだからだ。失うものは何もない。

 そしてこの方法を取った場合の利点はといえば、無限にある。会社を大きく変えられるかもしれない。CEOと深い信頼で結ばれる可能性もある。厄介な議論に取り組む能力が高まるのは明らかだ。会社のためにやれることをやった、という実感も得られるだろう。そして何よりも、現状を大きく揺さぶることができるはずだ。

 その他のあらゆることは、気力が萎えるだけで現状維持にしかつながらないだろう。政治的な駆け引き、接触の回避、CEOの要求を注意深く避けること、陰口、意に反してCEOを弁護すること、何もしないこと――。

 真実は、彼にとって唯一のチャンスだ。何も言わなければ、ボールは木に挟まったままなのである。

 これは、行き詰っているあらゆる状況に当てはまる。仕事で成果が出せないのなら、厳しい問いを投げかけ、障害を招いている不愉快な真実を見つけ出すのだ。その不都合が人であれ、プロセスや他の何かであれ、真実は事態の転換につながる唯一のチャンスである。不幸な結婚生活なら、真実を分かち合えば、結果がどうであれ少なくとも前へ進むことはできるだろう。

 私たちの多くが抱えている最大の問題は、困った状況に置かれているということではない。その状況が変わらないことにある。真実こそが、状況を変化させるのだ。