株主に評価されるソフトバンク、格付け会社に評価されるドコモ

 株主の評価と格付けという2つの面から、ソフトバンクとドコモを見てみよう。まず、ソフトバンクの大型買収実行前の2013年3月期の時点で2社の状況を見ていく。損益計算書から見てみると、ソフトバンクはすべての利益率でドコモを上回っており、利益率から見える収益性はややドコモを上回っていた。一方で効率性を表す総資産回転率はドコモの63%に対してソフトバンクは51%と、ややドコモを下回っていた。ただ、この2点については大きな違いはなく、この2つから見える事業の質は、ほぼ互角の状況にあったといえる。

 しかし、安全性は、2013年3月期の貸借対照表から計算できる純資産比率をベースにすると、ソフトバンクは約27%と低めであるのに対して、ドコモは約76%と圧倒的に高く、安全性は圧倒的にドコモが高くなっている。一方で、成長性については、2013年3月期の2社の売上高成長率をみると、いずれも約5%とほぼ互角であった。このように、2013年3月期の時点では、収益性、効率性、成長性は、ほぼ互角の状況にあり、唯一安全性の評価に大きな差があったのである。

 2014年3月期になると、これまで見てきたように、ソフトバンクはスプリントの大型買収をはじめ、複数の買収によって、売上高は2倍以上に増加したものの、スプリントがまだ赤字であることを背景に利益率が低下し、また買収のための借入によってもともと低めであった純資産比率がさらに低下している。つまり、成長性は大きく高まったものの、収益性と安全性が低下しているのである。一方でドコモは大きな変化はない。

 このように見てくると、ソフトバンクの動きは、収益性と安全性の低下はあるものの、仮に収益性の低下は買収直後の一時的なものであり、将来的には改善できる可能性があると考えると、大きな成長性の高まりを中心に、株主から評価される動きと考えられる。ただ、安全性の低下は、確実に格付けを低下させる動きになっている。その結果、好調な株価の一方で、元々低めのBaa3(BBB-)のムーディーズの格付けが、財務的にかなり課題のある企業という評価であるBa1(BB+)へ低下してしまう、という事態になっているのである。

 一方で、ドコモの株価は大きな変化がない中で、高収益をベースにそれなりの水準を維持してはいるもののあまり増加はしていない。一方で格付けは、抜群の安全性の高さを背景に、ムーディーズ(2014年3月末時点)によるとソフトバンクのBa1を大きく上回るAa2(AA)となっている。このように、株主から評価されるソフトバンク、格付け会社から評価されるドコモという大きな違いが出てきているのである。