前回の財務比率分析と関連付けて考えると、利益率につながる収益性を高め、売上高の拡大につながる成長性を高め、営業債権や在庫、また設備投資といった資産に関係するものを少なくしながら売上高を確保することで効率性を高めることに置き直すことができる。一方で、リスクが低いと評価されるためには、収益性や効率性を安定して良い状態に保ち、不確実性が高くならない程度の適度な成長性を確保し、また、財務的にもリスクを低くするために安全性を高くすることが望ましいことになる。

 それでは、次に格付けについて考えていこう。格付けとは投資家が社債を購入した時に、その企業が社債で借りた資金を予定通り返済できそうか、金利を払えそうかを、投資家の立場から評価したものである。資金を貸す立場からすると、このような評価はとても重要だ。評価のランクは格付け会社によって若干違うこともあるが、通常AAAが最高ランクで、大きな区分ではAA、A、BBBと続いていく。また、AAから下はそれぞれ細かくは3つに、例えばBBBはBBB+、BBB,BBB-といったように分かれている。このうちBBB-がそこそこの安全性を確保しており、資金を貸しても大きな問題はないという意味で限界的な評価であるため、多くの企業が最低でもBBB-の格付けは欲しいと考えている。

 格付けは何で決まるのであろうか。格付け会社によって評価するポイントの違いはあるが、一般に2つのポイントが重要だといわれている。1つ目は、借りた資金を返済するベースとなる、事業を中心にキャッシュフローを生み出す力が安定して強いことである。2つ目は借入金や社債が少ないことである。このうち1つ目は、収益性、効率性を安定していい状態に保ち、不安定にならない程度の適度な成長を保つことがポイントになる。一方で2つ目については、財務的な安全性を高くすることがポイントになる。。つまり、先ほど見てきた、リスクが低いと評価される方向性とほぼ同じなのである。

 このように見ていくと、収益性と効率性はいずれも重要である。加えてキャッシュフローの面から株主の評価を高めるためには成長性が重要になり、一方でリスクが低いと評価されたり、格付けを高めるためには安全性が重要になることが分かる。

 つまり株価が上がる方向性と、格付けを上げる方向には違いがあるのだ。結果、米国企業の中には、株主からの評価を高めることを重視して、格付けは最高ランクではないAランクを目標とし、安全性はある程度確保することにして、成長性を中心に株主からの評価を高めようとする企業もある。

 ただ、このバランスは、経済環境、業種によっても違ってくることには注意が必要だ。経済環境が厳しい時には、安全性を重視し格付けを高めることに比重をおき、逆に経済環境が良い時は、安全性よりも成長性を重視し、株価を高めることに比重を置くことが望ましいのだ。また、業界については、金融業界などのように安全性が高いことが顧客獲得などの面からも重要な業界では格付けがより重要になり、そうでない業界では、逆に株価を高めることの重要性が高くなるのである。