このように、2社のROEの違いは財務レバレッジの違いによるところが大きく、仮に2社の財務レバレッジにあまり違いがなければ、2社のROEにはあまり違いはなく、逆に収益性と効率性で若干上回っているドコモの方が高くなる可能性もある。また収益性と効率性は事業の質を表す比率でもあり、事業の質自体は、かえってドコモの方が良いということもできる。

 それでは、大型買収がソフトバンクのROEにどのような影響を与えたのかを見てみよう。

ソフトバンクのROE

ROE = 当期純利益率 × 総資産回転得率 × 財務レバレッジ

(2013年3月期)

35.0% =  13.7%  ×    51%    ×   498%

(2014年3月期)

32.9% =  8.8%  ×    56%    ×   670%

 これをみると分かるように、ROEは若干低下したがあまり大きな違いはない。ただデュポンシステムの内訳をみると、当期純利益率の低下と、財務レバレッジの上昇が目立っている。これは、これまでの分析で明らかになってきた、若干赤字のスプリントの買収によって利益率が低下したこと、スプリントの買収によって有利子負債が増加したことをまさに表している。

 それでは、収益性、効率性、安全性について確認していこう。まず収益性は、第1回目の損益計算書の読み方で触れたように、ドコモは2年間、どの段階の売上高利益率も大きな変化はなく、非常に安定していた。一方でソフトバンクは、すべての利益率がドコモを上回っていた状況から、すべて下回る状況に変化している。これは赤字のスプリントの買収によって、グループ全体としての収益力が低下したことが理由である。次の効率性を表す総資産回転率は、2社とも50~60%と、メーカーに多い100%前後、大量販売の小売業に多い200%前後に比較すると低めである。

 これはソフトバンクの場合は買収による無形固定資産の増加によって資産が大きくなっている面もあるが、2社の中核事業である通信事業では、ある程度資産が必要である一方でサービス業の特徴として売上高がやや小さめになる傾向があることも関係がありそうだ。また、営業債権(売上債権)回転期間は、2013年3月期はソフトバンクが107日、ドコモが112日とあまり違いがなかった。しかし2014年3月期はソフトバンクが91日と短くなったものの、ドコモは130日と長くなっている。このように、2社に違いがでてきているのは、ソフトバンクが買収によって回収期間が短い企業が連結されるようになったのに対し、ドコモは消費税アップによる駆け込み需要によって決算日直前の端末の売上高が上昇したことなどが表われている可能性がある。ただ、在庫は2社とも少なめであり、携帯端末などの在庫は売上規模からするとあまり保有していないことが分かる。

 最後に安全性は、純資産比率をベースにすると、連載第2回目の貸借対照表の中で触れたように、もともと安全性が低かったソフトバンクが大型買収でさらに低下し、一方でドコモは高い安全性を維持していることが分かる。

 なお、成長性については、売上高成長率をみると、ソフトバンクは前年比108%増加と2倍以上に拡大しているのに対して、ドコモの成長率はほぼゼロと前年とほぼ同じ規模となっている。