最後の安全性は、財務レバレッジの詳しい分析である。安全性が財務レバレッジと関係があるのは、そもそも財務レバレッジが借入金をどの程度使っているかを表しているからである。代表的な比率としては、連載第2回目の貸借対照表の読み方でみてきた純資産比率がある。これは、返済する必要がない株主の資金である純資産によってどの程度資産をカバーしているかを表すものであり、30%~40%となっていることが多かった。

 ただ、この純資産比率(純資産/総資産)の逆数は(総資産/純資産)となるが、これは、純資産と自己資本がほぼ同じものであることを考えると、ほぼ財務レバレッジ(総資産/自己資本)になっているのだ。ということは、純資産比率が高いということは、安全ではあるが、財務レバレッジが低い、つまりテコである借入金をあまり使っておらず、株主から見るとあまり好ましくはなく、一方で純資産比率が低い場合は、安全性はやや低いが、借入金をテコとしてある程度使っているので株主から見ると望ましい、と評価されることになる。このように考えると、純資産比率、またそのほぼ逆数である財務レバレッジは、一定の水準でバランスを取ることが重要といえそうである。

 このように、ROEは、デュポンシステムをもとに、収益性、効率性、安全性にブレイクダウンされていく財務比率の中心である。しかし、ROEは株主から見た投資効率を%で表したものであり、規模は関係ない。ただ、多くの企業にとっては規模の拡大を意味する成長も重要になる。したがって、ROEに加えて成長性を評価する売上高成長率なども見ていくことが必要になる。

 ROEを中心にして、それを分解した収益性、効率性、安全性を分析し、さらに規模の拡大に関連する成長性を見ていくことが、財務比率分析のポイントになるのである。

財務レバレッジが2社の違いを鮮明にする

 それでは、2014年3月期のソフトバンクとドコモの2社の状況を、財務比率を使って比較してみよう。まずはROEからみていこう。

2014年3月期のROE

ROE = 当期純利益率 × 総資産回転得率 × 財務レバレッジ

ソフトバンク

32.9% = 8.8% × 56% × 670%

ドコモ

 8.3% = 10.2% ×  61% × 133% 

(注)なお、ROEの計算にあたっては、総資産と自己資本は期首と期末の平均値を使って計算している。

 これから見ると分かるように、ドコモのROEは日本企業の平均的なレベルであるが、ソフトバンクはドコモの約4倍と圧倒的に高くなっている。ROEの結果からみると、株主から見た投資効率はソフトバンクの方がかなり高いといえる。それではデュポン計算式で分解した結果を見てみよう。まず当期純利益率と総資産回転率の2つはややドコモが高いものの、財務レバレッジはソフトバンクが約5倍と非常に高くなっている。

 つまり、収益性と効率性には大きな違いはいが、安全性につながる財務レバレッジはソフトバンクが圧倒的に高くなっている。これは、ソフトバンクが外部からかなりの資金を借りていること、つまり株主から見るとテコが効いていて評価できる反面、安全性がやや低い状況にあることを意味している。一方で財務レバレッジが低いドコモは、借入がほとんどなく、安全性は非常に高いが、株主の視点からするとテコが効いておらず、すこしもったいない、といえそうだ。