最後は、株主から預かっている自己資本に比較してどの程度資産が大きいのか、つまり自己資本以外の借入金などの負債をどの程度使って資産を持っているのか、さらにいうと、どの程度借入を行っているのかを表す財務レバレッジである。ここでレバレッジはレバー、つまりテコを使うという意味であり、株主から考えると、借入金は他人のカネでありテコを使っているようにみえるので、借入金をどの程度使っているかを表すこの指標をレバレッジと呼んでいるのである。この財務レバレッジは、借入金などが多いと高めに、少ないと低めになる。

 このデュポンシステムから考えると、株主から見た投資効率を表すROEを高めていくためには、収益性を高めることによって当期純利益率を高め、小さい資産で大きな売上高があげられるような効率の良いビジネスを行うことによって総資産回転率を高め、借入をすることで財務レバレッジを高くすることが望ましいことになる。このうち最初の2つ、つまり当期純利益率と総資産回転率を高くすることはまさにその通りで違和感はない。ただ、3番目の財務レバレッジを高めることは、借入金が増えて財務的に危なくなることにつながっていく。本当にそれでいいのであろうか。

 これはこう考えるといい。株主の立場から考えると、例えば金利以上に儲かるビジネスがある場合は、借入金で資金を集めそれを事業に投資をすると、事業の儲けよりも金利が低いためにさやが抜け、株主から考えると一円の資金も出さずに儲けが得られることになる。このように考えると、株主の立場からは、金利以上の儲けが出るのであれば、借入金で事業を行うことが望ましいことになる。ただ一方で財務的に危険な状態になってしまうほど借入金を増やすことは良くない。そのようなメリットとデメリットがバランスするように適度に借入金を使うことが望ましいということになるのだ。

 次に、収益性、効率性、安全性を分析するための財務比率について見ていこう。実はこれらは、デュポン計算式の分解式と深い関係がある。まず収益性は、デュポンシステムの最初の当期純利益率の詳しい分析である。具体的には、売上高総利益率、売上高営業利益率といった売上高に対するいろいろな利益率を使って、当期純利益率がなぜ高いのかを分析していくものである。これについては連載第1回目の損益計算書の読み方のところで触れてきた。

 2つ目の効率性は、総資産回転率の詳しい分析である。具体的には分母の資産に象徴される貸借対照表の項目と、分子の売上高に代表される損益計算書の関係をみていくものであり、小さな貸借対照表の項目と大きな損益計算書の項目という組み合わせが、効率が良いことになる。代表的な比率としては、どの程度の期間で顧客などから代金を回収しているかを意味する売上債権(営業債権)回転期間、何日分の在庫を保有して事業を行っているのかを表す在庫回転期間などがある。

売上債権(営業債権)回転期間 = 売上債権(営業債権) ÷ 一日当たりの売上高

在庫回転期間 = 在庫(棚卸資産:原材料部品・仕掛品・商品製品) ÷ 一日当たりの売上原価

 この2つは、どちらも期間が短い方が、不良債権がなく回収が早い、不良在庫がなく、また売れ行きがよいため在庫が少ない、といったことを意味するので望ましいことになる。また、2つの期間が短いことは、営業債権や在庫といった貸借対照表の数字が小さめで、売上高や売上原価といった損益計算書の項目が大きい場合であり、小さな貸借対照表と大きな損益計算書につながっていく。