多様な事業を抱えるソフトバンク、携帯一本のドコモ

 それでは2社のセグメント情報を見ていこう。まずソフトバンクのセグメントの区分は5つである。まず1つ目は、国内の携帯電話事業を中心に、オンラインゲーム事業(ガンホー)やもともとのソフトバンクの事業であるPC向けのソフトウエアや周辺機器の販売も含めた「移動通信」である。2つ目は、2013年7月に大型買収によって子会社化した米国での携帯電話事業を行う「スプリント」、3つ目は、法人向けの固定電話や個人向けのブロードバンドビジネスなどが含まれている「固定通信」である。4つ目はヤフーのインターネット広告やイーコマースなどが含まれる「インターネット」、また5つ目の「その他」には、プロ野球球団の福岡ソフトバンクホ-クスが含まれている。また、「その他」の右に「調整額」という項目があるが、これは各セグメントの間での取引があった場合の売上高のダブルカウントの相殺分や、各セグメントに割り振れない本社分などが含まれている。

 次に集計されている財務数値を見ると、売上高、減価償却費及び償却費、セグメント利益といった一般的な項目に加えて、EBITDA が挙がっている。これは、Earnings Before Interest Tax Depreciation Amortizationの頭文字である。このうちEarnings Before Interest Taxは、金利(Interest)と税金(Tax)を差し引く前(Before)の利益(Earnings)という意味で、営業利益に近いものである。さらにそのあとのDepreciation Amortizationは、減価償却費(Depreciation)と無形資産の償却費(Amortization)のことであり、この2つはいずれも費用であってもその年には基本的にキャッシュの支払がない費用である。これがBefore のあとにあるということは、この2つを差し引く前(Before)、つまりキャッシュフローに置き直すという意味になる。

 このように、EBITDAは、営業利益をキャッシュフローであらわしたもの、つまり本業から生み出したキャッシュフローを意味している。このEBITDAは本業の業績を表す1つの指標としてよく使われているが、EBITDAは、ほぼ営業利益に近いEBITにDAを加えるため、通常、営業利益よりも大きな数字になる。したがって、利益ではまだ赤字の事業の実状を、キャッシュフローベースで知りたい場合により有効性が高い。このように考えると、ソフトバンクは、利益では赤字のスプリントの実状を見ていく財務数値としてEBITDAを重視しているとも考えられる。

 それでは、内訳を見てみよう。まず売上高は、「移動通信」が約48%、「スプリント」が約39%を占め、中核となっている。一方でEBITDAでは「移動通信」の比重がより大きくなり約56%、次の「スプリント」は23%とやや低下し、逆に「インターネット」が約11%に浮上してくる。

 次にセグメント利益を見ると、移動通信の比重がさらに高まり約69%、「インターネット」が約21%に浮上し、逆に「スプリント」は若干の赤字になっている。このように、すべての面で移動通信の比重が高いが、セグメント利益の面では「インターネット」の貢献度が高いこと、また買収した「スプリント」は、売上規模の面では比重が高いが、セグメント利益は赤字であること、ただ、EBITDAはそれなりに確保しているためキャッシュフローでの貢献はあることなどが見えてくる。また、売上高に対するEBITDA率、あるいは営業利益率を見てみると、「インターネット」の収益性が最も高く、またスプリントを除く「移動通信」、「固定通信」も高い収益性を確保していることが分かる。

 ドコモを見てみよう。ドコモのセグメントは、「携帯電話」と、健康支援や医療や食事などに関連する事業などが含まれる「その他」の2つに分かれている。NTTグループの1企業として携帯電話事業にフォーカスしているため、売上高、資産ともにそのほとんどが「携帯電話」のものである。また営業利益については、「その他」は赤字となっており、携帯電話の儲けがほぼ全社の儲けとなっている。また、利益率とROAでみてもその他は赤字のため貢献しておらず、まさに「携帯電話」事業の会社である。

 このように、セグメント情報から見ると、ソフトバンクは「移動通信」を中核に、「インターネット」と「固定通信」を含めた3つのセグメントがいずれも高い収益率を確保しており、スプリントの収益性の向上が課題であることが表われている。一方で、ドコモは正に「携帯電話」事業の会社であることが表われている。