財務が強いドコモ、買収の成果を期待されるソフトバンク

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【再掲】図表

 まず、2社の貸借対照表の大きさ、つまり資産の合計金額から確認しよう。ソフトバンクの資産合計は前年の約7兆2千億円から約16兆7千億円へと2倍以上に増加している。大きな変化がないドコモと比較すると、前年はドコモとほぼ同じ規模であったものが2倍以上に拡大している。やはり大型買収の影響は大きいといえる。

 次に財務の構造をみてみよう。まず純資産比率は、2014年3月期で、ソフトバンクは17.1%とかなり低めになっているのに対し、ドコモは75.8%と非常に高くなっている。前述のように、純資産比率は一般に30~40%程度が多いが、ソフトバンクはそれを大きく下回り、逆にドコモは大きく上回っている。また前年と比較しても、ソフトバンクはもともと約27%とあまり高くはなかったものが、約10%も下がっている。

 次に、デットエクイティレシオはどうであろうか。デットは借入金や社債といった有利子負債のことであるが、金融資産がある場合は、それによって有利子負債をすぐに返済することができるので、有利子負債から金融資産を差し引いた、実質的な有利子負債、で考えていくことが多い。この実質的な有利子負債のことを、キャッシュなどの金融資産と相殺した有利子負債という意味で、NET DEBTと呼んでいるが、このNET DEBTを使ってデットエクイティレシオを計算してみよう。まず、ソフトバンクは、前年で既に28.3%(=21.3%+30.1%-23.1%):26.7%、つまり1.06:1と1をやや超えていたのが、2014年3月期には、42.2%(=6.9%+48.1%-12.8%):17.1%、つまり2.46:1と、大きく上昇している。一方で、ドコモは、2年連続で有利子負債の合計が金融資産を下回っており、実質無借金の状態が継続している。

 このように、純資産比率、デットエクイティレシオのどちらをみても、財務的な強さは圧倒的にドコモが高く、ソフトバンクは元々やや低めであった財務的な強さが大型買収によって大きく低下している。なお、ドコモについては、デットエクイティ比率を1:1まで高めてもいいとすると、エクイティの金額である5兆7千億円程度の借り入れを行ってM&Aなどに投資を行う余地があるとも考えられ、かなりの余裕があるといえそうだ。

 次に事業の構造を見ていこう。まずソフトバンクは、2014年3月時点で、流動資産が約26%、有形固定資産が約22%といずれも3分の1よりもやや少なめであるのに対し、無形固定資産と投資その他の資産の合計が約53%と半分以上を占めている。中でものれんをはじめとする無形固定資産が約46%とかなりの部分を占めており、そのうち90%弱は、買収による商標権、顧客基盤、ゲームのタイトルなどさまざまな無形の資産の評価額である。また、前年と比較しても、無形固定資産の構成比率が約20%から倍以上の約46%にまで増加している。

 なお、ソフトバンクには、比率は高くないものの、持分法投資・その他金融資産という項目がある。この中には、中国のSNSサイトであるレンレン(人人)の運営会社、中国の電子商取引最大手であるアリババドットコム、オフィス用品の通信販売を手掛けるアスクルなど、将来的に投資として、あるいは事業との相乗効果によって利益を生み出す可能性のある投資が含まれている。

 一方で、ドコモは、流動資産が約34%、有形固定資産が約34%、無形固定資産と投資その他の資産の合計が約32%と、ほぼ3分の1ずつの平均的な構成になっている。

 なお、2社に共通する点として、通信サービス事業に比重を置いているため、携帯電話やスマートフォンといった在庫はかなり少なめになっていること、また通信網の充実のために通信設備をはじめとする有形固定資産をそれなりに保有していることが挙げられる。

 このように、ソフトバンクは、多額の借入による大型買収の結果が明確に表われており、その成果をしっかりと生み出すことが大きな課題であるのに対して、ドコモは実質無借金という財務の強さが目立っている。