「研究開発費の500倍の差」が意味すること

写真を拡大
【再掲】図表2

 ソフトバンクの2014年3月期の売上高は約6兆7千億円と、前年の倍以上に増加している。ドコモの売上高は前年とほぼ同じ約4兆4千億であり、ソフトバンクが買収によって急拡大し、売上高規模で大きく逆転したことが分かる。

 次に原価率は2社とも50%台と比較的低めであり、通信サービス業界は原価率が低めであることが表われている。したがって、2社とも販売管理費を多めに使う余地があるといえる。ただ、ソフトバンクは前年から約9%上昇しており、これは、セグメント利益がマイナスとなっている今期買収したスプリントの原価率が高いことなどが理由のようだ。

 次の販売管理費は2社とも25%前後であまり違いがない。ただ、ソフトバンクの方が若干上昇しており、やはり買収によるコスト増が影響している。

 ただ、今年はまだ公表されていないが、2013年3月期の2社の販売管理費の中身を見てみると興味深いことが分かる。ソフトバンクの場合は、販売手数料及び販売促進費に販売管理費の約半分となる約5000億円を投入する一方で、研究開発費には10億円弱しか使っていない。一方でドコモは、販売促進関係の費用としては広告宣伝費だけしか公表していないが、販売管理費の6%程度の約700億円であるのに対し、研究開発費には販売管理費の約10%となる1,000億円以上を投入している。

 ドコモは広告宣伝費以外にも販売手数料や販売促進費は使っているはずだが、ある程度の研究開発費を使っていることなどを考えると、ソフトバンクほどは使っていないと推測される。つまり、販売促進にコストをかけ、研究開発はほとんどせずに通信、インターネット関連のサービス会社に徹するソフトバンクと、販売促進もやりながらも、通信技術などの研究開発も行い、技術もベースにした通信サービス会社であるドコモ、という違いが浮かび上がってくるのである。

 確かに、ソフトバンクは独自の技術開発といったイメージはなく、アップルをはじめとする他社が作ったスマートフォンの販売と通信サービスの提供にフォーカスしている。そのため、顧客の獲得や確保を重視し、白い犬のお父さん、樋口可南子演ずるお母さん、上戸彩演ずる娘などからなる白戸家(ホワイト家)のCMをはじめとするインパクトの強い大量の広告や、他社からの「乗り換え」手数料の負担など、販促活動にかなりの比重をおき、金額を投入しているのである。

 次に営業利益率は、ソフトバンクが16.3%と前年の25%から大幅に低下し、前年並みの18.4%を確保したドコモに逆転されている。また、ソフトバンクの営業利益には、ガンホーなどの子会社化による株の評価益などが約3%含まれているため、実際の落ち込みはさらに大きい。

 このようにソフトバンクの営業利益率は、まだ高い水準にはあるものの買収によって大きく低下している。これは買収されたスプリント事業が、2.6兆円の売上高に対して若干の赤字となっており、まだ売上高規模の貢献だけで、利益の貢献がないことが理由だ。ただ、前年をみるとドコモに比較して6%以上高く、買収した部分を除くと、利益率が高いヤフーの広告事業などのインターネット事業をはじめ、高い営業利益率を確保するベースはありそうだ。また、一般に営業利益率が10%前後あると優良企業であるといわれる中で、2社の営業利益率はいずれも10%を十分に上回っており、高収益な業界であるといえそうだ。

 次のその他の損益を見てみると、ソフトバンクのその他の費用が大きくなっている。これはソフトバンクが以前から借入金や社債を使った買収を行ってきており、さらに今期の大型買収でさらにそれが増え、支払利息が増大しているためである。一方でドコモはその他の損益での変化はあまりない。これは基本的に無借金経営であるドコモの支払利息の負担が少ないことが理由だ。このように、ソフトバンクはドコモに比較すると財務的には弱い傾向にあるといえる。

 その後は、日本企業としては一般的な約40%程度の税金が差し引かれて当期純利益率が集計されている。この当期純利益率はソフトバンクが前年から約5%低下して8.8%と、前年とほぼ同じ10.2%を確保したドコモに逆転されている。

 このように、ソフトバンクはドコモをベースにすると、この1年間で「規模がやや小さく収益力は高い会社」から「規模はかなり大きいが、収益力の低い会社」に変化している。売上高は大きいが利益を生み出していないスプリントの買収の影響がまさにあらわれた結果であるが、今後スプリントを中心に収益力を高め、買収によって増えた支払利息を減らすために財務の強化をすることが課題になりそうだ。