3.結果ではなく、学習を評価する
 ビジネスモデルが確定しない段階で、オペレーション上の綿密なマイルストーンを設定するのは難しい。また探求途上における財務予測は、信憑性に欠ける。IBMが不確実な新規成長事業に取り組んでいる時に測定・評価するのは、チームが交流した顧客の数や、プロトタイプを作成するスピードなどだ(詳細はHBR2013年7-8月号“Six Ways to Sink a Growth Initiative”を参照。邦訳は本誌2014年8月号掲載予定)。幹部はチームに対して「何を学んだのか。まだわからないことは何か」といった質問を頻繁に投げかけよう。イノベーターはそのアイデアがいかに重大なインパクトをもたらしうるか、滔々と語るだろう。ただしリーダーは、その話の前提がどれほど妥当なのかを注視すべきである。もっともらしい数字に惑わされてはならない。

4.資金供給をカレンダーではなく、リスクの削減に連動させる
 通常、企業は現行の事業に四半期または年次ベースで資金を供給するが、ベンチャーキャピタルは異なる。投資家が十分な資金を供給するのは、起業家が重大な不確実要素に対処できるようにするためだ。たとえば主要な技術的課題の克服、適切なチームの雇用、あるいは自分たちのソリューションを購入するよう顧客を説得すること、など。創業者がそれらの不確実性を一掃すれば、次の投資ラウンドへと進める。できなければ、投資家はポートフォリオ内の別の新興企業へ投資対象を移す。かように、すべてのアイデアが有力なビジネスに変わるとは限らないことを企業は自覚しておく必要がある。不必要に時間と経営資源を浪費するよりも、早期に撤退するほうがよい。

5.過去に不確実な新規事業で十分な経験を積んだ者を、意思決定者に据える
 重要な新規成長プロジェクトを監督するのは、経営上層部であることが多い。だが、その目的が新しいビジネスモデルの探求であるなら、既存事業の経営陣は(当然といえるが)十分な経験を持っていない。過去に新規事業を育てた経験を持つ者が経営委員会にいれば、関与させるべきだろう。さらに、新興企業で十分な経験を積み不確実性への対処法を心得ている外部の者か、新規事業の関連分野について市場で十分な経験を積み細かいニュアンスを理解している専門家を加えて、チームを補強する。さもなければ、経営陣を教育する必要が生じるためにチームの進捗はいっそう遅れることになる。

 以上のアプローチに、自社の新規事業チームがどの程度従っているか。それを測定する試金石がある。経営陣に説明するための資料づくりに費やした時間(または、資料に盛り込む情報を机の上で調べていた時間)と、顧客との交流、製品の開発、潜在的なパートナーとの交流に費やした時間の比率を、チームに尋ねてみることだ。その開きが3対1よりも大きい場合は、問題がある。

 上記5つの指針は成功を保証するわけではない。だがこれらに従えば、実行可能な道が前方に開けているかどうかを、チームは早期に判断できるようになる。実現性が見えたならば、企業が事業拡大のために取り入れている規律が役立つ可能性が高い(ただし新たな成長モデルが中核事業とまったく異なる場合は、話が別だ)。実現性が見えなければ、少なくとも企業はそのことに素早く気づいたのだから、次のアイデアに移れる。


HBR.ORG原文:Five Ways to Innovate Faster June 24, 2013

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スコット・アンソニー(Scott Anthony)
イノサイト マネージング・ディレクター
ダートマス大学の経営学博士・ハーバード・ビジネススクールの経営学修士。主な著書に『明日は誰のものか』(クリステンセンらとの共著)、『イノベーションの解 実践編』(共著)などがある。