この考えは、以前は心理学者の間でも通説だったのだが、1つ問題がある。どうしても正しいようには思えないのだ。ストレスの影響(よし悪しにかかわらず)を判断する際に、その「量」は驚くほど役に立たない情報なのである。

 ストレスの影響を判断するための最も重要な要素は、「ストレスに対する意識の持ち方」であるようだ。クラム、サロベイ、エイカーらの発見によれば、ストレスに対する人々の見解は一様ではなかった。ストレスを悪いものだと考えている人々(大多数が該当するといってよい)は、「ストレスはマイナスの影響をもたらすので回避すべきだ」などの言葉に賛同した。研究者たちはこれを「ストレスは衰弱要因」と考えるグループとした。反対に、「ストレスを経験することは学びと成長につながる」などの言葉に賛同した人々は、「ストレスは向上要因」と考えるグループとした。

 クラムらの研究では、ある国際金融機関の400名近い従業員を対象として、まずはストレスに対する意識を調べた。その結果、「ストレスは向上要因」と考える人々は、(「ストレスは衰弱要因」のグループと比べて)より健康で、人生への満足度が高く、仕事のパフォーマンスでも優れていたのである。

 これだけでも驚くべきことだが、さらに耳寄りな報告がある――意識は変えられるのだ! あなたがほとんどの人と同様に「ストレスは衰弱要因」だと考えて生きてきたとしても、それにとらわれる必要はない。上記の研究では、400名のうち一部の従業員に、3分間のビデオを次の1週間に何本か見てもらった。内容は2パターンのうちいずれかで、健康、パフォーマンス、自己成長に対してストレスのよい影響を描いたものと、悪い影響を描いたものだった。結果、よい影響のビデオを見たグループ(つまりラッキーな人々)は、健康状態と仕事のパフォーマンスがかなり高まったと答えたのである。

 他の調査でも、「ストレスは向上要因」だと考える人々は、生産的な戦略を取ることが多いという結果が示されている(たとえば、ストレスのある仕事で他者にフィードバックを求めるなど)。またこのタイプは、コルチゾールの分泌レベルが「最適」になりやすいことも明らかになった。ストレス要因に対するコルチゾールの分泌は、多すぎても少なすぎても生理的に悪影響となりうる。「ストレスは向上要因」と考えていると、分泌が――童話『3びきのくま』に出てくる小さな子ぐまのお粥のように――「ちょうどいい」具合になるのだ。

 これらの研究結果をまとめると、非常に明確な結論が得られる。ストレスがあなたを打ちのめすのは、あなたがそうと思い込んでいるからに他ならない。もちろん、多すぎる仕事を抱えて大変ではあるだろう――誰しも時間やエネルギーには限界があり、働きすぎてしまうこともある。

 しかし困難や課題に直面した時に「つらい作業だ」と考えるのではなく、「学習と成長のチャンス」と捉えれば、実際に幸福感が増し、より健康に、そして有能になれるのだ。あなたはストレスを減らさなくても、考え方を少し変えるだけでよいのかもしれない。


HBR.ORG原文:How You Can Benefit from All Your Stress March 14, 2013

■こちらの記事もおすすめします
助言を求めるのはよいことか? 不安が意思決定を歪める
【書籍拝見】行動経済学入門 状況次第で答えも変わるフレーミング効果、コントロールイリュージョン
パフォーマンスを上げる人の9つのストレス対処法

 

ハイディ・グラント・ハルバーソン
(Heidi Grant Halvorson)

コロンビア大学ビジネススクールのモチベーション・サイエンス・センターの共同ディレクター。