この収益の増加は、店舗の採算性を大きく左右するほどに大きい。しかも一時的な現象ではなく、レストラン・ガードが導入されてから少なくとも数カ月間続いた。

 窃盗の減少がわずかだったにもかかわらず、全体的な業績がそれほど改善したのはなぜなのか。それに答える前に、ニューヨークタイムズ紙のロアの記事に送られた読者のコメントをいくつか紹介したい。多くの人が、レストラン・ガードは度が過ぎた干渉であり、不公平で、恐ろしいものと捉えていた。たとえば、

「ビッグ(レストラン)・ブラザーがあなたを見ている」

「コメントを寄せている人の多くが、このやり方に疑問を持っていないことが信じられない。従業員をひそかに監視することが当たり前になったら、それは右翼がこの国をファシズムに向かわせている証だ」

 ここではっきりさせておこう。レストラン・ガードは、従業員の個人的な電子通信の記録も、その他プライバシーと判断されるいかなるものも監視しない。監視するのは彼らの業務上の行動であり、それはマネジャーがやるべき仕事そのものだ。

 従業員を一切監視すべきでないという考えも滑稽だが、優れたモニタリングを行うレストラン・ガードに腹を立てる上記のコメントも同様だ。少しぐらいは窃盗の余地を残してあげるべきだと言いたいのだろうか。そうでないことを望む。最近私はアメリカの労働者が直面している厳しい経済状況について書くことが非常に多いが、その解決策として、職場からものを盗む権利を認めよ、という発想を支持するつもりはない。

 では、先述した収益の増加は何だったのか。それはどこから生じたのだろうか。泥棒が去り(もしくはクビになり)、正直者と入れ替わったのではない。レストラン・ガードの導入後、離職率の著しい増加はなかった。

 我々の考えはこうである――収益が増えたのは単に、取引を監視されている事実を知った従業員たちが、真面目に仕事をし始めたからだ。少し単純化していえば、窃盗という選択肢がなくなったことを常習犯が理解し、お金をもっと稼ぐにはもっと懸命に働き、より丁寧な接客に努め、より優秀な店員になることが最良の方法だと気づいたのだ。そして一部の従業員がそのように振る舞い始めたのを見て、他者も倣ったものと考えられる。不正行為と同じように、善行も伝染するのだ。

 この説明を裏付ける最も有力な根拠は、レストラン・ガードの導入後にチップの割合が著しく増えたという事実だ。もし従業員が監視の強化に不満を感じ、それを態度で示したならば、この結果になった理由が説明できない。むしろ彼らは、雇用者や顧客に正しい態度で接し始めたようだ。喜ばしい話ではないだろうか。


HBR.ORG原文:In Praise of Electronically Monitoring Employees October 24, 2013

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アンドリュー・マカフィー(Andrew McAfee)
マサチューセッツ工科大学センター・フォー・デジタル・ビジネスのプリンシパル・リサーチ・サイエンティスト