プロジェクト・モードに長く留まりすぎると、多くの危険が生じる。プロジェクトはどんなに効果的に運営されたとしても、結果が安定しない。起業家には顧客を失望させる余裕はない。そして、まだ実験段階だからという理由だけで、粗悪な製品やサービスを許す顧客はまず存在しない。

 また、プロジェクト・モードへの固執は競合他社にチャンスを奪われる危険も招く。起業家の偉大なアイデアがコスト効率のよい競合に模倣され、それまでに創造した価値が、特許の有無に関係なくすべて破壊される――そうした例は枚挙に暇がない。

 危険はまだある。組織が創業者に過度に依存するようになるのだ。どの企業も、創業者のスキルを効率的なプロセスに転換しない限り、自律的な組織にはなりえない。そしてプロジェクト・モードばかりでは、効率的なプロセスの運営を助けてくれるはずの従業員を苛立たせる。何かを改善し続けることに喜びを感じる人は、よいプロセス・マネジャーとなる。そうした人々は一般的に秩序を好み、プロジェクト・モードに伴いがちな変化や無秩序には不安を感じる。

 競争力があり自律的な企業をつくるためには、うまく転換を実現する必要がある。組織のニーズに敏感な、強く賢いリーダーならわかるはずだ。またそうしたリーダーは、2種類の人々を率いる術を心得ていなければならない。一方は、最初の顧客を獲得するために採用された、実験的でクリエイティブで、プロジェクトを愛する人々。もう一方は、効率的で信頼性のある業務遂行に必要な、秩序のあるプロセスを好むタイプだ。さらに、賢明なリーダーであれば、自分がかかわらなくても運営できるプロセスを構築したいと考えるであろう。

 転換を成功させるための最初のステップは、なぜプロジェクトからプロセスへの移行が企業の繁栄に不可欠なのかを説明することだ。説得力のある説明ができれば、チームは不安を感じなくなる。効率的で信頼性のあるプロセスの設計・開発が受け入れられ、官僚的であるとの批判も回避できる。

 組織が成熟していくと、業務は次第にプロセス主体となっていく。とはいえ、プロジェクトが完全になくなるわけではない。むしろプロセスの創造や改善のために、プロジェクトは必要だ。プロジェクトとプロセスの違いを理解しているリーダーは、プロジェクト好きな人々を手放さず、最初の顧客を見出し獲得した彼らをプロジェクト型の業務に従事させる。一方でプロセスを好む人々には、自社がますます効率的で信頼性のある企業になるよう貢献してもらう。

 急速に成長・成熟を遂げていくスタートアップ企業には、転換が容赦なく求められる。多くの起業家にとって、プロジェクトからプロセスへの移行は特に困難である。起業家が失敗する確率が高い理由の1つがここにある。そしてこの転換の必要性を理解した起業家は、企業存続の確率を大幅に高めるのである。


HBR ORG.原文:Surviving a Start-Up’s Transition from Projects to Processes March 12, 2014

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デレック・リドウ(Derek Lidow)
プリンストン大学の客員教授。アントレプレナーシップ、イノベーション、創造性を担当。アイサプライ(iSuppli)の創設者で元CEO。著書にStartup Leadership (Jossey-Bass, 2014)がある。