カルペ・ディエム――古代ローマの詩人ホラティウスが記した「この瞬間をとらえよ、いまを生きよ」という言葉がある。その意味と価値を見事に示すエピソードを、ブレグマンが紹介する。最高の一瞬を求めることで日々のパフォーマンスが向上し、人生さえも変わるかもしれない。
私は長年、筋トレや有酸素運動、ヨガなどのエクササイズを毎日続けている。ところがその努力にもかかわらず、これまで効果はあまり出ていなかった。
ただしそれは、数か月前までの話だ。最近になって、私の身体は変化し始めた。筋肉が付いて引き締まり、脂肪も目に見えて減り、体重は2キロ以上落ちた。さて、私は何を変えたのか。
まず私が“やらなかった”ことは何かといえば、運動の時間を増やすことだ。実際にはむしろ減らしている。私が変えたのは、運動中の時間の使い方だ。
同じメニューを毎日繰り返すのではなく、新しいルーチンを盛り込んでいる。つまり、もっと賢く運動することにしたのだ。バランス・エクササイズ、パワームーブ、インターバル・トレーニングを加えたさまざまなメニューで、違う筋肉を鍛える。
エクササイズのルーチンを変更すると、すぐに結果が出た。そこから気づいたことがある。私たちは、成果に近づかない行動で時間と労力を無駄にしがちなのだ。テレビを見ながらランニングマシーンで1時間走ってみても、身体に目に見えた変化はなかった。しかしその1時間の使い方を変えてみると、成果が現れ始めた。
私たちは怠惰なわけではない。その行為に力を尽くしてはいる。しかし私が毎日やっていたランニングと同じように、努力が最善の結果をもたらさないことはしばしばある。
基本的な原理はシンプルだ。私たちはさまざまな活動――会議、事業運営、メール、意思決定――に時間を費やしている。その瞬間の行動において最もインパクトを生むことができれば、何の犠牲も払わずよい結果につながるわけだ。
そこで、1日を過ごしながら始終、次の質問を自分に投げかけることをお勧めする。「いま、この瞬間を最も有効に活用するとしたら、何ができるだろう?」
この瞬間、どう答えればいいだろう? どう行動するのがベストだろう? どんな質問ができるだろう? 何を問題として提起すべきだろうか? どの意思決定が、最大のインパクトを生むだろうか?
このように自問し、正直に答えることによって、よりよい結果につながる新たな行動を取ることができる。最も難しいのは、見出した答えを貫き、その瞬間に最大の成果を得るためにリスクをいとわないことだ。これには勇気が必要になるが、見返りもある。