2.勇気が必要になる形でリーダーシップを教える
 ほとんどのリーダーシップ・プログラムは、学習のための安全な場を用意する。勇気についても言及するかもしれない。なぜ勇気が大切なのか、それはどのようなものなのかを教え、ケーススタディを示す。シミュレーションを行う場合もあるだろう。

 だが、このやり方は間違っている。

 勇気を教える唯一の方法は、それを必要とさせることだ。持っている勇気を、実際にふるう機会を与えなくてはならない。実際に居心地の悪い状況に身を置いてもらい、その不安な感覚を味わう時間を与えるのだ。

 ほとんどのリーダーシップ・プログラムでは、参加者や同僚が事前に匿名で記入したフィードバックが与えられる。これは安全なものだ。しかし私が上級幹部のために実施している「リーダーシップ・ウィーク」では、参加者は実際に顔を合わせ、プログラムのなかで見聞きしたことに基づいて、リアルタイムで直接フィードバックを行う。これには度胸が必要だ。

「リーダーシップ・ウィーク」では、参加者はリスクにさらされる。傷つき、言いにくいことを相手に伝え、聞きたくないことを聞かされ、これまでとは違う態度や行動を取るというリスクだ。こういった経験を積めば積むほど、肝心の現実の世界でも同じ経験を恐れず実践するようになる。

 アレンティクスの経営委員会では、休憩後にCFOが口火を切り、議題にはないヨーロッパ支社の問題を取り上げたいと述べた。ジャンは素早く反応し、「我々は、すでに対処している」と、以前と同じ言葉を繰り返した。

 沈黙が流れ、緊張が高まる。「ここだ」と私は心の中でつぶやいた。「いまこそ、この会議の最大の難所だ。誰か声を上げるだろうか?」

 大丈夫だった。休憩中に話したこと、そして口火を切ったCFOの勇気に促されて、人事部長、営業部長、そしてCOOが続く。そして的を射た、敬意ある力強い対話が生まれた。

 これがリーダーシップであり、勇気である。勇気をふるう経験を積ませることが、優れたリーダーを育てる秘訣なのだ。


HBR.ORG原文:Why So Many Leadership Programs Ultimately Fail July 10, 2013

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ピーター・ブレグマン(Peter Bregman)
CEOおよびリーダーにアドバイスを行う戦略コンサルタント。最新刊は『最高の人生と仕事をつかむ18分の法則』(日本経済新聞出版社)。