――ディズニーによる買収後、あなたとジョン・ラセター氏はディズニー・アニメーションとピクサーを大成功に導きました。このことはディズニーCEOのロバート・アイガー氏に、マーベルやルーカスフィルムの買収という大きな賭けに出る自信を与えたのでしょうか。

 我々は8年前に、機能不全に陥っていたディズニー・アニメーションを引き継ぎ、再生へと導きました。2006年以降の6作品はすべて大ヒットとなりました。これらの成功があったおかげで、『アナと雪の女王』の時にはマーケティング部門が世界的な展開を後押ししくれました。興行収入は10億ドルを超え、公開終了までにはアニメ映画史上の最高益を達成している可能性もあります(これは2014年3月に実現)。ですから、たしかにボブ(ロバート・アイガー)は喜んでいるでしょう。

 ラセターと私が強くこだわってきたのは、ディズニーとピクサーの両スタジオを統合しないということです。どちらのスタジオも、もう一方のために制作の仕事をすることはない――この原則を絶対的なものとして、いまも貫いています。それぞれの独自の主体性(local ownership)を、私はとても重視しています。それぞれの組織文化を独創的に保つために、いくつかの仕組みを取り入れました。

 ボブはマーベルに対して、このモデルを適用しています。マーベルの文化はピクサーともディズニーともまったく違うのですが、そのまま独自の路線に任せているのです。組織間の橋渡しとなる機能は必要ですが、個々の文化に立ち入ることはありません。

――3Dアニメーションは、出版同様、民主化されていくのでしょうか。デスクトップ・パブリッシングの出現によって、デザインとレイアウトのツールが誰にでも入手可能となったように。

 そうですね、基幹となるハードウェア、ソフトウェアのツールと価格帯は、常に変化しています。小規模のグループが集まって何かを試すことがますます簡単になるということです。そして一部の人々に、まったく新しい方法で創造性を発揮するチャンスがもたらされる。新たなツールの存在、そしてコスト構造の変化によって、予期せぬ出来事が起こるようになるわけです。

 これは多くの分野について言えることです。音楽業界でも、出版業界でもそうでした。変化を拒む人々も多くいますが、経済原理がやがてその抵抗を打ち負かすでしょう。実際、抵抗は時間の無駄です。望みはどうであれ変化を受け入れれば、そこから学び、適応し、専門知識を身につけようという姿勢が生まれます。そうすれば変化への準備を整え、次に来る新しいものをより明確に認識できます。

 一方で、「新しいもの」とは果たして何なのか、というのは別の話です。これまで私はずっと、「次に来る大きなトレンドは何か」と人から尋ねられてきました。私はテクノロジーを変える側の組織の一員ですが、その変化がどれほどのペースで、どんな形で起きるのかをうまく予測できたことは1度もありません。一般的なトレンドへの理解と、変化を受け入れる姿勢は持つようにしていますが、私の予測能力は明らかに低いのです。

 例を挙げれば、私はユタ大学での研究を終えようとしていた頃(1974年)、次に来るトレンドは製造業におけるコンピュータの活躍だと確信していました。その展望がはっきりと目に見えていたのです。

 でもそれは、すぐには実現しなかった。そこから30年もかかったのです。なぜかといえば、企業はより短期的な利益を求め、海外の安い労働力を選んだからです。それを実行した人々はいまや引退し、自身を偉大な経営者だったと思っていますが、基本的に彼らがやったことはアメリカの製造インフラの解体です。

 つまり、我々は「このテクノロジーによって、何が可能になるだろう?」と考えることはできます。でも実際には、そのテクノロジーを取り巻くエコシステムは、目先の利益の追求、エゴ、誤った認識、市場シェアを失う恐怖、といったものに満ちています。これらの要因によって変化のプロセスは複雑になり、予測がとても難しくなるのです。


HBR.ORG原文:Managing Creativity: Lessons from Pixar and Disney Animation April 9, 2014

※エド・キャットムルが創造性のマネジメントやチームづくりについて著したCreativity, Inc.の邦訳版は、今夏、ダイヤモンド社より刊行予定。

■こちらの記事もおすすめします
ディズニーで受け継がれる「企業セオリー」
経験は創造性を邪魔するか
優れた企業文化を構成する6つの要素
「盗み合い」を促進し、社内にナレッジ市場をつくれ

 

デイビッド・A・プライス(David A. Price)
メイキング・オブ・ピクサー 創造力をつくった人々』(早川書房)の著者。