「君はまだ『靴屋のオヤジ』になりきれていない」

 もう1つ、これは数ヵ月前のことでしたが、ある経営者の方から言われたことはよく覚えています。何人かが集まった食事の席でした。ミスターミニットはこんなことをやっていて、ここが課題で、これからこんな戦略を考えています、といったことを熱っぽく語ったところ、一言「ウザい」と。

「おそらく、君の言っていることはほぼすべて正しいと思う。ただ、いまの君がそれを言っても社員はウザいだけだと思うよ。ぽっと入ってきた若造が正論を話すだけでは誰もついてこないし、何も起こらないだろう。君はまだ『靴屋のオヤジ』になりきれていないね」

 これにはハッとしましたね。

――数ヵ月前というと、すでにコミュニケーションを取っていたと思いますが、まだ足りないと。

 まだ足りていなかったと思います。正確には、足りないというよりも、急ぎがちで、理屈としては正しいことをしようとしてしまうんですね。それも、できるだけ早く。それ自体は間違っていませんが、仕事は1人でしているわけではありません。チームとして、立場のある会社の一員として仕事をしている以上、会社を引っ張っていかなければいけないと気づかされました。

「君がまずすべきなのは、社員とコミュニケーションを取って、現場に貢献して、現場をヒーローにしてあげることだよ。それができれば現場から信頼してもらえるでしょう。信頼してもらえれば、何を頼んでもやってくれると思う。こいつのためならやってあげようかなと思わせたら、君の勝ちだ」

 この言葉はよく覚えています。同じ目線でない人間には共感できないし、ついていきたいとも思えない。フォロワーがいないということは、リーダーになれていないということです。そして、リーダーであるためには、正しいことばかり言ってもダメで、同じ目線でしっかりとコミュニケーションを取って、理解と共感を得て、みんなを1つの方向に引っ張っていくことが必要だと学びました。

――店舗を巡回するほかに、どのようなコミュニケーションを取っていますか。

 すべて終えましたが、社長就任をきっかけに、全国を回って方針説明会を行いました。これまでは一部社員に対してだったものを、全社員に対して実施したのは初めてです。また、過去は説明会の回数も3、4回でしたが、今年は15回です。1人で運営する店舗が多いので、誰か代わりの人が見つからないと参加できないんですね。1日だけ指定されても、ほとんどの社員が店を離れられません。

 なるべく全員が来られるようにした結果、東京だけで7回、札幌、仙台、大阪、広島、福岡でも開催しています。さすがに100%とはいきませんが、95%以上はカバーできたと思います。また、話の内容も、小難しい話ではなく、同じ目線でわかりやすく、モチベーションが上がるような話を選んでいます。

 ユニフォームを変えますと言ったときの反応は印象的でしたね。重要なんですよ、かっこいいものを着ていれば誇りが持てますから。社内の問題をすくい上げて解決しましょうと伝えたときも、「ほかにもこんな問題があります」「これを解決したい!」とどんどん問題点が上がってきました。現場は問題意識を持っているんです。

*最終回は5月30日(金)公開予定。