老舗企業だからこそ可能性の種が落ちている

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長峰氏(左)の地道な取り組みを拾い上げ、靴磨きサービスを開始

 老舗だからこそ、すでに持っている可能性の種は多いと思います。靴磨きサービスにしても、三田赤羽橋店の長峰はすでにやっていたことです。自分の道具を持ち込んで、完全なサービスという形で。現場を回っていた私がそれを見て、「こんなきれいになるのはすごい。サービスとしてみんなやったほうがいい」と思い、今回の靴磨きサービスが始まっています。現場から始まったサービスなんです。

 歴史が長い分、そういう種がたくさんあるんですよ。いろいろな社員が、いろいろなことにトライしています。老舗企業には、ベンチャーにはないヒト・モノ・カネ・仕組みがあります。ただ、それを牽引するリーダーや「えいや!」で始めるアントレプレナーがいませんでした。アントレプレナーシップ、リーダーシップを持った人さえいれば、老舗企業ではイノベーションが生まれると思います。もしかしたら、ベンチャーよりも大きなイノベーションが生まれるかもしれません。

――経営と現場が分離していたから、そうした種が埋もれてしまっていた。

 経営と現場が分断されていたということは、大きな原因だと思います。ただ、過去にも「靴磨きをやりませんか?」という提案は社内で上がったそうです。しかし、そのたびにリスクが懸念されて潰れてきました。似たようなサービスもありましたけど、それは中途半端で終わっています。責任を取る人、信じて引っ張っていける人がいなかったこともその理由だと思います。

――迫さんが現場に立つようになったのはいつからですか。

 営業本部長になってからです。そこまで頻繁に立てているわけではありませんが、とくに新規サービスを始めた三田赤羽橋店では、週末に店に入って靴を磨いてみたり、実際に接客をすることもあります。すると、「この接客トークではダメだ」「こんなツールを用意してみたけど、使いにくいな」といろいろな気づきがあります。

 現場に立ってみるとすぐにわかるんですよ。このサービスはダメ、こんなマーケティングはダメだ、と。同じ目線で考えるとわかることでも、上から目線で、「お前らやっておけ!」という姿勢ではうまくいかないことは多いと思います。

――現場と同じ目線でいるというのは迫さんの一貫した姿勢だと感じます。なぜそう考えるようになりましたか。

 1つには、これも前職の山口の影響が大きいと思います。彼女は常に、現場と同じ目線で話をします。日本はもちろん、途上国の生産地にいっても、現場の人と一緒に食事をするし、しっかりと意見を聞いて、それを反映するんです。「こういうデザインはどう?」と言われたら「いいね。でも、ここは違う」と、同じ目線だからこそすべてを受け入れるわけではありませんが、議論をして、そこからアイデアをつくっていました。