――なぜ、そうした問題がこれまでは放置されていたのでしょうか。

 現場とのコミュニケーションがまったく取れていなかったことは大きいと思います。従業員は会社から取り残されて、まるで“孤児”のようになっていたんです。彼らには仕事に対するモチベーションがまったくありませんでした。そこで、毎日のように店舗を回って、店舗の従業員とコミュニケーションを取って、深刻だけれどもシンプルな問題を徹底的に解決していきました。シンガポールは狭い国なので、やろうと思えば簡単に全店舗を回れてしまいます。

 彼らの話を聞き、自分たちが問題だと思っている点が解決されることを知ると、どんどん前向きに働いてくれるようになりましたよ。売上も自然とついてきたと思います。とはいえ、シンガポールはそれほど売上が大きくなかったので、次は日本を立て直してほしいと言われ、2013年の7月に経営企画部長兼アジア事業統括部長となりました。

改革には戦略よりも実行が必要

――経営企画部長に就任されたときの社員の反応はどうでしたか。

 シンガポールを立て直したことは社内でも噂になっていたようです。あの人は若いけど結果を出してきたと、ある程度信頼されていたと思います。もし、いきなり外から入ってきて経営企画部長になっていたとしたら「なんだよ」と思われていたかもしれません。

 ただ、そうは言っても、最初はいまほどコミュニケーションも取れていなかったので、まずはマーケティング面の立て直しをして、それがうまくいったら、それまで統一されていなかったクリエイティブやブランドを作り直してと、1個1個やってきたという感じですね。

――日本に戻って社内を見渡したとき、どんな印象を持ちましたか。

 シンガポールと同様に、当然のことが当然にされていないと感じました。たとえば、顧客のターゲットが定まっていない。男性も女性も、若い人もお年寄りも、とにかく全部。当然、優先順位がなければブランドがぶれてしまうので、顧客調査をしっかり行ったところ、うちのコアは20代、30代で働いている女性の方々だとわかりました。それをベースに店のポスターや見た目を変えていき、チラシを配ったり、Webを作り直したり、1つずつ変えていきました。

――そうした基本的な分析や施策を、これまでの方たちはやっていなかったのでしょうか。

 あったとは思います。でも徹底はされていませんでした。どこの再生企業もそうだと聞いていますが、とにかく当然のことが徹底できていない。うまくいっていない企業の特徴だと思います。重要なのは、戦略よりも実行です。何をしなければいけないかは、これまでもわかっていたと思います。それこそ、投資ファンドや優秀なコンサルタントが入っていますから。ただ、その戦略を実行できていなかった。

 なぜ実行できていないかというと、とくに新しいことをやるときには、さまざまなボトルネックがあるからです。それを突っ切るくらいの突破力、リーダーシップがないと中途半端になります。微妙な新規事業、微妙なマーケティング、微妙なブランディングがいくつも生まれて、結局どれもうまくいかない。私の場合はベンチャーの経験があったので、問題なんてあって当たり前だと思っていました。だからこそ突っ切れたと思います。