(8)すでに成し遂げた進捗について考える

「職場における感情、モチベーション、認識を豊かにするうえで最も重要な要因は、有意義な仕事で進捗を得ること」。これはテレサ・アマビールとスティーブン・クレイマーが「進捗の法則」と呼んでいるものだ。「小さな成功」が私たちを前進させるという考え方で、特にストレスに満ちた状況下でよく当てはまる。

 心理学の観点からいえば、私たちの心理状態を決めるのは目標に到達したかどうかではなく、現状と目標とのギャップがどれだけあるかだ。先に残された課題に目を向ける前に、少し時間を取って、これまで達成してきた道のりを振り返ることが非常に有効な場合もある。

(9)「楽観」と「防御的悲観」のどちらが自分に有効かを知る

 仕事を目一杯抱えている時に、前向きでいるのは難しいものだ。また人によっては、難しいと感じるだけでなく「間違っている」とさえ考える。それは完全に正しいといえる――その人にとって楽観は役に立たないのだ。

 多くのプロジェクトや目標をやりくりすることは、それだけで十分ストレスに満ちている。しかし私たちは無意識のうちに、さらにストレスを増やしてしまっていることがある。目標に取り組む際に、不自然な方法、つまり自分のモチベーションのタイプに合わない方法を選んでしまった場合である。

 では、あなたのモチベーションはどのタイプだろう。そして「前向きでいる」ことは、あなたにとって正しいといえるのだろうか。

 一部の人々は自分の仕事を、成功や達成の機会と考える。これを心理学者は「促進焦点(promotion focus)」と呼んでいる。つまり、利益を最大化しチャンスを逃がさないことだ。

 別の人々にとっては、自分の仕事は安定を守ることであり、懸命に働いて得た自分の境遇を失わないことである。これは「予防焦点(prevention focus)」と呼ばれ、危険の回避、責任の全う、義務の遂行を重視する。要するに、損失を最小限に抑え、獲得したものを手放さないことである。

 促進と予防という2つのモチベーションを理解すると、同じ目標に対する取り組み方が人によってこうも違う理由がわかる。促進型のモチベーションにおいては「熱意」(欲しいものを熱望する気持ち)が重要で、楽観主義によって維持・増強される。促進焦点を持つ人のパフォーマンスにおいては、「すべてが大いにうまくいく」と信じることが不可欠だからだ。

 一方、予防型のモチベーションでは、「警戒心」(危険を寄せ付けないようにすること)が重要であり、これを保つのに必要なのは楽観ではなく、一種の防御的悲観である。つまり、予防焦点を持つ人が本領を発揮できるのは、「うまくいかない可能性があるのは何か、それを防ぐにはどうすればよいか」を考える時だ。

 さて、あなたはどちらだろうか。成功と賞賛を求め、高らかな目標を追求しているのか。それとも、義務と責任を全うすることを第一とし、誰からも頼られる人間になろうとしているのか。まずは自分のモチベーションの焦点を見極め、それから「明るい展望」か「強い警戒心」のどちらかを選ぶようにすれば、ストレスを減らして自分のベストを引き出しやすくなるだろう。

 これら9つの方策のいくつか、または全部を使ってストレスに対処すれば、職場だけでなく生活のあらゆる場面ではっきりと変化が現れるはずだ。たとえばクリスマス休暇に、条件付けによる計画を家族との付き合いにも応用してみるのもいい。私の場合は、「逆上しそうになったらエッグノッグを飲む」という方針が驚くほど効き目を発揮してくれている。

(訳注:エッグノッグは卵、牛乳か生クリーム、砂糖を混ぜたものにラムやブランデーを加えた飲み物。クリスマスによく飲まれる。)


HBR.org原文:Nine Ways Successful People Defeat Stress December 13, 2012


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